平成18年3月21日(火)、(財)日本医療機能評価機構が、厚生労働省委託事業である医療安全支援センター総合支援事業の一環として、「医療安全支援センター医療機関向け報告会」を都内で開催した。
また、3月19日(日)に名古屋でも同様に報告会が開催されており、こちらでは愛知県医師会の川原弘久理事による「愛知県医師会苦情センターの現状」について基調講演が行われた。
「医療安全支援センター」とは、平成15年度より都道府県や保健所設置市区等に設置され、最近では二次医療圏にも設置が進められているもの。医療制度改革による医療法改正(平成19年4月1日施行)により、制度化される予定でもある。この日の報告会では、東京都、埼玉県、神奈川県、横浜市の担当者から相談対応の現状等が紹介された。
医療機関向け報告会となっているが、関係団体等関心のある人の参加も可能となっていたため、本ネットワークの事務局も参加してきた。内容の一部を会員の皆様にお伝えする。
【各支援センターにおける相談対応の現状】
東京都 | 埼玉県 | 神奈川 | 横浜市 | |
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相談受付件数 | 平成16年度;11,308件 年間平均約1万件 平均50件/日 |
平成16年度;2,097件 平成17年度(4月~1月までの10ヶ月間);2,659件 |
平成16年度;1,458件 | 平成17年度(4月~3月20日まで);3,957件 平均16.8件/日 |
相談対象機関と その内容 |
病院;苦情が65%。医療内容、医療行為によるもの、従事者の接遇に関するものが多い。 診療所;健康相談の割合が多い。 歯科;医療費に関する相談が多い。接遇に関するものは少ない。 |
相談・質問;56.6% 苦情;34.5% 医療機関がどこにあるのか、という質問が全体の30%。よって、実際に医療機関に行ってからの相談・苦情は70%。 |
病院;半分弱 診療所;3割弱 【苦情内容】 1)医療行為に関するもの;19.5% 2)接遇に関するもの;12.6% 3)相談者が医療事故・医療過誤だと主張するもの;9.6% |
病院;37% 診療所;19% 歯科;8% 【苦情内容】 病院、診療所では接遇に関する内容がトップ。歯科では治療内容に関するものが圧倒的に多い。 |
診療科目別 受付状況 |
1)精神科;18.0% 2)内科;13.5% 3)歯科;9.3% (平成16年度実績) |
1)内科;17.1% 2)精神科;10.5% 3)歯科;7.9% 4)整形外科;7.2% |
1)内科;18.5% 2)外科;17.8% 3)歯科;9.4% |
1)内科 2)歯科 3)整形外科 4)精神科 の順。他と比較して歯科の件数が多いのが特徴。 |
相談対応者 | 他の業務と兼任。 多くて4~5人。 |
平成16年度から医療安全相談担当の組織を設置。 現在5人の相談専門職員で対応。 |
専任者1~2人。 | ― |
相談対応時間 | 平均15分程度/件 しかし1~2時間かかるケースや、半日以上かかる来庁者などばらつきがある。 |
●~15分;67% ●~30分;21% ●~60分;10% ●60分~;2% |
20分以内が約8割 | ― |
受付しながら感じること、医療機関へのアドバイス等 | ●相談者(患者)が要点を絞って聞けていないため、医療者側も何を答えてよいかわからず、不信感につながっている、という印象をうける。 ●病院相談窓口の存在を知らない相談者が多い。 ●自由診療の費用は、事前に契約内容を書面で示すことが必要。 |
●じっくり話を聞くと、たいていの相談者は納得する。どうしても納得しない場合は、医療機関の相談窓口に直接聞くように、勧めている。 ●患者さんには、病院相談窓口の存在をはっきり伝え、ここに何でも相談してくださいと周知することで安心感を与えられる。 |
●コミュニケーション不足の問題については、医師が説明したつもりでも、患者側がパニック状態で聞いていないこともある。 ●患者側に要望を表現させる、悩み事を整理させるといった工夫が必要。 ●医療者側が反論したい気持ち、正論で行きたい気持ちはわかるが、そこを抑えて、患者・家族の心情に理解を示すことが必要。 |
●病院側で既に何時間も対応しているのに、こちらに相談してくるケースもある。 ●担当部署、診療科どまりでなく、院内の安全委員会など、医療機関全体で検討してほしい。 |
その他 | ●相談受付内容の統計はホームページに掲載。 ●医療機関の管理者や相談窓口担当者向けの講習会で情報を提供。 ●医療機関への立ち入り検査を実施し、相談窓口の設置状況を調査。 ●今後は、地域レベルで事例検討会などを積極的に展開していきたい。 |
●受付事案全件につき、インフォームド・コンセントの問題がなかったかチェックし、集計している。→34.7%が問題あり(説明不足、不信感、質問しにくい等) ●患者さんのための「3つの宣言」事業 埼玉県との共同事業 1)充分なインフォームド・コンセントをします 2)診療情報を積極的に開示します 3)セカンド・オピニオンに協力します この宣言書に医療機関名を入れたものをポスターとして配布し、見やすいところに掲示してもらっている。 ●医学的な判断の必要な相談に備え、17年度から2週間に1回、医師による相談受付を開始(予約制)。 |
●1年に2回、医療安全推進協議会を開催。地区医師会へ、対応困難な事例等を紹介。 ●相談員はカウンセリング技法を学ぶ機会有。 →研修で示された言葉 「信頼関係がなければ防衛本能が働いてしまう」「共感的に理解しなければ真の情報は得られない」「相談者を一番良く知っているのは相談者自身である」 →患者との信頼関係の構築が重要。 |
●1年に3回、地区医師会、病院協会、薬剤師会、看護協会と一緒の関係団体連絡会を開催。 ●今年度、8件の立ち入り検査を実施。 例)無診療で薬を渡している、個人情報保護法違反で同意を得ないまま診療情報を出した、患者が転倒した、など。 |
(参考) | ||||
各窓口のホームページ (事務局調べ) |
東京都患者の声相談窓口 | 埼玉県医療安全相談窓口 | 神奈川県医療安全相談センター | 横浜市医療安全相談窓口 |
シンポジスト
シンポジスト。右から
東京都医療政策部医療安全課 課務担当係長の河西あかね氏、
埼玉県保健医療部医療整備課 主幹の吉田幸司氏、
神奈川県保健福祉部医療課 主査の笠井熱史氏、
横浜市衛生局医療安全課 担当課長の西川美智子氏、
三宅坂総合法律事務所 弁護士の水沼太郎氏、
(財)日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部長の後信氏。