平成16年8月27日(金)~29日(日)「第127回日本医学会シンポジウム」が、パレスホテル箱根で開催された。
今回のテーマは「医学・医療安全の科学」。そこで、本ネットワークの理事であり、日本医学会の副会長でもある小泉明先生に、シンポジウム当日の概要をお話しいただいた。
日本医学会では年間3回のシンポジウムを開催します。
今回のシンポジウムの特色は、医療安全に対して、病院関係者だけでなく、病院外の方々も含め、安全に関わる様々な学問的なことを、総合的な見方をして、幅広く議論したところにあります
第一セッションでは、医学研究の安全性、やさしくいうと、研究のリスク、研究者が実験中に危険な目に遭うことがないか、といった研究面での安全について議論されました。
第二セッションでは、大学病院における医療安全対策が紹介されるなど、情報交換が活発に行なわれました。
また、製造業、建設業など産業界の人たちにとっては、当然安全が重要ですから、そういう方々が安全管理にどう苦労しているのか、どのように進歩してきたのかを学ぼうということで、第三セッションでは、外部の方を講師として招きました。
第四セッションでは、国内外の事例紹介、情報提供などが行なわれました。
質疑応答も熱心に行なわれたため、最後の総合討論では、高久会長から医療安全学会の設立を推奨するような話も出ました。具体的に誰が中心で行なう、というところまではいっていません。もちろん、本シンポジウムで話が出たからと言って、いきなり医療安全学会ができるわけではありません。最初はボランタリーな組織が出来、自発的に会議を持ったり、機関紙を出したり、そういうところから始まっていくのだと思います。
なお、日本医学会は、分科会に加盟したいと申請してきた学会の審査をし、認定するところです。
参考までに、テーマと演者の一覧を掲載する。
Ⅰ.医学研究における安全性 | ||
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1 | 遺伝子工学実験と安全性 | 吉倉廣(国立感染症研) |
2 | 微生物実験と安全性 | 野本明男(東大大学院・微生物学) |
3 | 動物実験における安全性の検討-クローン胚は安全か- | 勝木元也(自然科学機構・基生研) |
Ⅱ医療安全の課題 | ||
1 | 薬剤のリスク管理-医薬品関連医療事故防止のために- | 土屋文人(医科歯科大・歯学部附属病院) |
2 | 大学病院における医療安全の取り組み | 原田賢治(東大付属病院・医療安全管理対策室) |
3 | 厚生労働省の取り組み | 岩崎康孝(厚労省大臣官房厚生科学課) |
4 | 医療安全対策の課題-事故防止と事後対応 | 児玉安司(東大大学院・クリニカルバイオインフォマティクス) |
Ⅲ医療安全への工学アプローチ | ||
1 | 医療安全へのヒューマンファクターエンジニアリング | 河野龍太郎(東京電力株式会社 技術開発研究所) |
2 | 医療事故防止への工学的方法論適用の実際 | 棟近雅彦(早大・理工学部経営システム工学科) |
3 | 建設業における質・安全への全社的取り組み | 前田又兵衛(前田建設工業株式会社) |
4 | 医療安全学ことはじめ | 飯田悦功(東大大学院・工学系研究科/化学システム工学) |
Ⅳ医療安全とシステム | ||
1 | 患者安全のために看護業務のリスク低減化を図る | 嶋森好子(京大付属病院・看護部) |
2 | 医療安全と標準化 | 武澤純(名大大学院・救急集中治療医学) |
3 | 医療安全と組織的質管理 | 三宅祥三(武蔵野赤十字病院) |
4 | 医療安全のパラダイムと方法論 | 上原鳴夫(東北大大学院・国際保健学) |