中里浩規氏
2012年5月24日、「自動認識と医薬品包装」をテーマに、株式会社岩田レーベル主催の技術講習会が開催された。(前回2010年の様子はこちら)
今回はその中から芳賀赤十字病院 中里浩規氏の講演「医薬品のGS1データバーの利用」の一部をご紹介する。
「医薬品のGS1データバーの利用」
芳賀赤十字病院 医薬品管理課 中里浩規
小物商品ではバーシンボルを表示する面積がない、バーコードラベルが貼付できない場合がある。これらの商品識別を実現するための省スペース型バーシンボルがGS1データバーである。
医薬品に関しては、2008年9月以降出荷されるものは、1本単位に省スペースタイプのバーコード(GS1-RSS)をつけるようになった(2007年まではRSSコードと呼ばれ、厚生労働省通知でもRSSとしていたため医薬品ではGS1-RSSと表示されている)。機械的に製品を識別し、取り違えによる医療事故の防止を図り、製造・流通から患者使用までの流れを記録することにより、トレーサビリティを確保するためである。
ヒューマンエラー対策として環境に左右されにくく、慣れによる効果の薄れが生じにくいという特徴を持つデータバーであるが、一方、うまく読みとれずスキップしてしまうという欠点もある。
医療機関での利用としては入力と監査の場がある。
入力に関しては、特定生物由来製品の管理にバーコードを読み取るシステムを導入した医療機関で、処理時間が短くなり、薬品管理入力の効率が良くなったという報告がある。監査においても、システムを導入した結果、わずかだが注射出しにかかるスタッフの作業時間を抑えることができたというデータがある。
しかし医療機関での利用率はまだ低い。なぜかというと、普及には経済性、利便性、安全性のバランスが重要であり、人員配置の見直しや効率の良い運用の工夫が必要だからである。問題のあるバーコード表示は効率を悪くし、監査のスキップを招いてしまう点にも留意が必要だ。
例えば、輸液バッグでは、下地が透明のためレーザーが透過して読み取れない、バーコードが折れ曲がっているため読みとりにくいことがある。またバーコードの近くに他の印刷がありスペースが少ない、脱酸素剤がバーコードの上にあり読めない、印字の文字が非常に小さいという問題もあった。PTP包装のバーコード表示は、表示面積が少なく、裏面1箇所にしか印字されていない、使用時にはカットするためバーコードを利用できない、1シートごとのバーコード表示では数量監査が出来ない、という問題もある。これらに対して改善されているものもあるが、このような理由ですんなり表示が読めないとスキップしてしまう(読まなくなってしまう)おそれがあり、バーコードを貼付している意味がなくなってしまう。
このように課題の多いバーコードであるが、新しい可能性としては、患者のバーコード利用が考えられる。調剤包装単位のバーコードが付記されれば、携帯などで薬袋・お薬手帳等の処方情報及びシートのバーコードを読み取り、服用時間等の服用記録を残すことができ、治療に利用できるようになる。バーコードは患者による利用が、一番効果があるのではないかと考えている。