今回は気管支喘息の患者に対する投薬に関して、病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。
No.256の事案では、裁判所は、医師が心臓の既往症がある気管支喘息の患者に対してテオドールを処方したこと自体は、診療契約の債務不履行に当たらないとしましたが、テオドールの副作用についての説明義務違反があったと判断しました。
そして、医師の説明がなかったため、患者は、テオドールの副作用を十分に把握し、自らの権利と責任において自己の疾病の治療方法を決定する機会を奪われたことになり、これによって患者が受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の支払いを病院側に命じました。
No.257の事案の紹介にあたっては、一審判決(福岡地裁平成17年8月29日判決)も参考にしました。
同事案では、控訴審裁判所は、ステロイド剤は、末梢リンパ球(特にT細胞)の減少、免疫グロブリン値の低下をもたらし、小児に特有な副作用として麻疹、水痘などの感染症の重篤化があるとされ、また、インターフェロン合成を抑制し、ウイルス増殖が促進され、広範な心筋え死を起こしやすいとされていることを指摘しました。また鑑定医と思われる証人が、ステロイドの大量投与により、患者の感染防御免疫が抑制され、麻疹が重症化した可能性は高いと判断していることにも言及しています。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。