医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2006年5月24日
No.71「精神病院入院中の患者が病室で自殺。病院側に損害賠償を命ずる判決」

福岡地方裁判所小倉支部 平成11年11月2日判決(判例タイムズ1069号232頁) (争点) 患者の自殺は予見可能であったか 夜間の巡回体制を整えること等によって、患者の自殺は回避可能であったか 損害 過失相殺 (事案) 患者A(死亡当時52際の男性)は、平成8年10月3日、アルコール依存症、精神分...

2006年5月24日
No.70「医師が手術の際、静脈と動脈を見誤って動脈切断。右下肢の切断を余儀なくされた患者が悲観して自殺。病院側に損害賠償責任を認める判決」No.70「医師が手術の際、静脈と動脈を見誤って動脈切断。右下肢の切断を余儀なくされた患者が悲観して自殺。病院側に損害賠償責任を認める判決」

高松地方裁判所観音寺支部 平成16年2月26日判決(判例時報1869号71頁) (争点) 医師の過失 医師の過失と患者の死亡との因果関係 損害賠償額 (事案) 患者(昭和23年生まれの女性)Aは、平成11年6月25日、Y医師が経営するYクリニックで両足の冷えについて診察を受け、その際、Y医師は、両下...

2006年4月14日
選択の視点【No.68、69】

今回は、末期医療・延命治療における医師の行為が問題となった判決を2件ご紹介します。 医療技術が発展した現代においては、治癒の見込みのない患者に対する延命医療の限度が問題とされ、患者の自己決定権・生命の質の観点から、「安楽死」「尊厳死」についても様々な議論が行われています。「わかりやすい医療裁判所処方...

2006年4月14日
No.69「難病のALS患者が痴呆の症状を伴っており、人工呼吸器装着に関する患者や家族の意思が明らかでなかった場合には、医師が患者に人工呼吸器を装着すべき義務を負わないとした地裁判決」

仙台地方裁判所平成12年9月26日判決(訟務月報48巻6号1403頁) (争点) 医師らに人工呼吸器装着義務違反があるか 医師らに説明義務及び意思確認義務違反があるか 患者の生命の危険が差し迫った時期における医師らの所為に過失があるか (事案) 患者C(昭和7年生まれの女性)は、平成4年9月末ころ「...

2006年4月14日
No.68「医師が末期患者に薬物を注射して患者が死亡。医師による積極的安楽死として許される要件を満たしていないとして、医師に殺人罪を適用。懲役2年、執行猶予2年に処した判決」

横浜地方裁判所 平成7年3月28日判決(判例時報1530号28頁) (争点) 安楽死の要件 本件医師の具体的行為の評価 量刑の理由 (事案) A医師(昭和59年医師免許取得)は、T大学医学部助手として、同大学医学部内科学四教室に所属していた。出向を終えた平成3年4月1日付けで、T大学附属病院での勤務...

2006年3月14日
選択の視点【No.66、67】

今回は、輸血に関する判決を2件ご紹介します。 どちらも、輸血を伴った手術について、手術自体には問題がなかったにもかからわず訴訟で病院側の責任が認められました。 No.66は、宗教上の信念から、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している患者に対して、輸血を行う可能性があることを説明しないま...

2006年3月14日
No.67「心臓手術の際、放射線照射なしの輸血が行われ、患者が移植片対宿主病(GVHD)を発症して死亡。病院の責任を認め、輸血用血液を供給した日赤の責任を否定した判決」

横浜地方裁判所 平成12年11月17日判決(判例時報1749号70頁) (争点) 日本赤十字社及び病院に輸血用血液製剤に放射線を照射すべき義務が有るか 日本赤十字社に輸血後GVHDに関する警告表示義務が有るか (事案) 患者A(昭和3年生まれの男性)は、平成5年12月4日、S病院で3カ所の冠動脈バイ...

2006年3月14日
No.66「宗教上の信念から輸血拒否の意思を表明していた患者の手術で、輸血を実施。病院の損害賠償義務を認めた高裁判決を、最高裁判所も維持」

最高裁判所 平成12年2月29日判決(判例時報1710号97頁) (争点) 宗教上の信念から輸血を伴う治療行為を拒否するとの明確な意思を有している患者に対して、「手術の際に輸血以外には救命手段がない事態に至ったときは、患者及びその家族の諾否にかかわらず輸血する」という方針を採用していた病院が、その説...

2006年2月15日
選択の視点【No.64、65】

今回は、説明義務の違反が問題となった判決を2件ご紹介します。 医師は患者に対して症状、治療の方法・内容・危険性・代替的治療法の有無等を説明し、患者が治療法を選択するのに必要な情報を提供したうえで、当該治療について患者の同意を得る義務を負っています。 No.64の判決は、患者への説明及び患者の同意なし...

2006年2月15日
No.65「国立病院でAVM(脳動脈奇形)の全摘出手術を受けた患者に重篤な後遺障害が生じその後死亡。医師の治療法の選択には過失は無かったが、手術の危険性についての説明義務違反があったとして国に慰謝料の支払いを命じた地裁判決を高裁も維持」

東京高等裁判所 平成11年5月31日判決(判例時報1733号37頁) (争点) KのAVM治療のため、本件手術を選択したことにつき医師らに過失があったか 本件手術に際してKやXらに対して手術の必要性、危険性について十分な説明がなされていたか (事案) 患者Kは、昭和48年(満5歳)ころから左半身麻痺...

ページの先頭へ