医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2006年4月14日
No.69「難病のALS患者が痴呆の症状を伴っており、人工呼吸器装着に関する患者や家族の意思が明らかでなかった場合には、医師が患者に人工呼吸器を装着すべき義務を負わないとした地裁判決」

仙台地方裁判所平成12年9月26日判決(訟務月報48巻6号1403頁) (争点) 医師らに人工呼吸器装着義務違反があるか 医師らに説明義務及び意思確認義務違反があるか 患者の生命の危険が差し迫った時期における医師らの所為に過失があるか (事案) 患者C(昭和7年生まれの女性)は、平成4年9月末ころ「...

2006年4月14日
No.68「医師が末期患者に薬物を注射して患者が死亡。医師による積極的安楽死として許される要件を満たしていないとして、医師に殺人罪を適用。懲役2年、執行猶予2年に処した判決」

横浜地方裁判所 平成7年3月28日判決(判例時報1530号28頁) (争点) 安楽死の要件 本件医師の具体的行為の評価 量刑の理由 (事案) A医師(昭和59年医師免許取得)は、T大学医学部助手として、同大学医学部内科学四教室に所属していた。出向を終えた平成3年4月1日付けで、T大学附属病院での勤務...

2006年3月14日
選択の視点【No.66、67】

今回は、輸血に関する判決を2件ご紹介します。 どちらも、輸血を伴った手術について、手術自体には問題がなかったにもかからわず訴訟で病院側の責任が認められました。 No.66は、宗教上の信念から、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している患者に対して、輸血を行う可能性があることを説明しないま...

2006年3月14日
No.67「心臓手術の際、放射線照射なしの輸血が行われ、患者が移植片対宿主病(GVHD)を発症して死亡。病院の責任を認め、輸血用血液を供給した日赤の責任を否定した判決」

横浜地方裁判所 平成12年11月17日判決(判例時報1749号70頁) (争点) 日本赤十字社及び病院に輸血用血液製剤に放射線を照射すべき義務が有るか 日本赤十字社に輸血後GVHDに関する警告表示義務が有るか (事案) 患者A(昭和3年生まれの男性)は、平成5年12月4日、S病院で3カ所の冠動脈バイ...

2006年3月14日
No.66「宗教上の信念から輸血拒否の意思を表明していた患者の手術で、輸血を実施。病院の損害賠償義務を認めた高裁判決を、最高裁判所も維持」

最高裁判所 平成12年2月29日判決(判例時報1710号97頁) (争点) 宗教上の信念から輸血を伴う治療行為を拒否するとの明確な意思を有している患者に対して、「手術の際に輸血以外には救命手段がない事態に至ったときは、患者及びその家族の諾否にかかわらず輸血する」という方針を採用していた病院が、その説...

2006年2月15日
選択の視点【No.64、65】

今回は、説明義務の違反が問題となった判決を2件ご紹介します。 医師は患者に対して症状、治療の方法・内容・危険性・代替的治療法の有無等を説明し、患者が治療法を選択するのに必要な情報を提供したうえで、当該治療について患者の同意を得る義務を負っています。 No.64の判決は、患者への説明及び患者の同意なし...

2006年2月15日
No.65「国立病院でAVM(脳動脈奇形)の全摘出手術を受けた患者に重篤な後遺障害が生じその後死亡。医師の治療法の選択には過失は無かったが、手術の危険性についての説明義務違反があったとして国に慰謝料の支払いを命じた地裁判決を高裁も維持」

東京高等裁判所 平成11年5月31日判決(判例時報1733号37頁) (争点) KのAVM治療のため、本件手術を選択したことにつき医師らに過失があったか 本件手術に際してKやXらに対して手術の必要性、危険性について十分な説明がなされていたか (事案) 患者Kは、昭和48年(満5歳)ころから左半身麻痺...

2006年2月15日
No.64「帝王切開後、患者の同意なく子宮と右卵巣を摘出。患者の夫である医師が子宮摘出に同意をした場合でも、大学病院の過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所 平成13年3月21日判決(判例時報1770号109頁) (争点) 説明義務違反の有無 (事案) 患者XはY大学病院形成外科K医師(教授)の妻(40歳)で、2人の間には長男がいた。Xは平成6年1月Y大学病院産婦人科を受診し、妊娠と診断され、以後T医師の検診を受けていた。 8月22日、X...

2006年1月18日
選択の視点【No.62、63】

今回は、いわゆる美容整形手術に関する判決を2件ご紹介します。 この分野は、他の医療行為に比べて手術の必要性、緊急性が少なく、審美的観点から患者が主観的に満足することが主な目的となるという特徴があります。そのため、手術の結果に患者が納得しなかった場合に、医師の説明義務違反が問われることがあり、裁判所も...

2006年1月18日
No.63「患者が当初要望していなかった左下顎骨の切除を勧めるにあたり、医師に説明義務違反があったとして、損害賠償を認めた判決」

東京地方裁判所 平成13年7月26日判決(判例タイムズ1139号219頁) (争点) 下顎骨の切除手術について説明義務違反があったか (事案) Xは、当時54歳で社交ダンス用の衣装などの注文製作業や社交ダンスの講師をして いた女性であるが、頬の骨がやや出ているように思ったため、平成5年11月1日、Y...

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