医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2006年7月21日
No.74「視野異常が認められた患者について下垂体腫瘍の発見が遅れたとして大学病院及び内科担当医師の過失が認められた判決」

東京地方裁判所平成14年4月8日判決(判例タイムズ1148号250頁)) (争点) 下垂体腫瘍の発見が遅れたことにつき、内科担当医師に過失があったか (事案) 患者X(女性・年齢不明)は、平成11年1月頃から、視力低下を感じはじめ、3月には近所の開業医や都立病院の眼科を受診したが、視野異常は認められ...

2006年6月12日
選択の視点【No.72、73】

今回は、患者の容態が急変した事案についての判決を2件ご紹介します。 「因果関係」や「過失」を考える上で参考になろうかと思います。 No.72は、損害賠償請求訴訟における因果関係の立証の程度についての指導的役割を果たしている判決です。そして、この最高裁判決で肯定された因果関係を前提に、差し戻しされた高...

2006年6月12日
No.73「麻酔剤でのうがいからショック症状に陥り、健忘症候群の後遺症。患者の特異体質によるとして、医師の過失を否定した判決」

佐賀地方裁判所判決 昭和60年7月10日判決(判例時報1187号114頁) (争点) キシロカイン希釈水溶液でのうがいとショック及び後遺症との因果関係 医師の過失の有無 (事案) 患者A(当時40歳の女性。公務員)は、昭和51年7月7日Y医師経営の病院に初来院し、咽頭痛を訴えた。Y医師は、Aに既往症...

2006年6月12日
No.72「3歳男児がルンバール施術後、嘔吐、けいれんの発作等を起こし、知能障害・運動障害等の後遺症が残った。ルンバール施術と男児の発作及びその後の病変との因果関係を認める最高裁判決

最高裁判所第二小法廷 昭和50年10月24日判決(判例時報792号3頁) (争点) 訴訟上の因果関係の立証の程度 本件ルンバールと患者の発作及びその後の病変との因果関係 (事案) 患者A(当時3才の男児。もともと脆弱な血管の持主で入院当初より出血性傾向が認められた)は、化膿性髄膜炎のため昭和30年9...

2006年5月24日
選択の視点【No.70、71】

今回は、患者の自殺が関連する判決を2件ご紹介します。 患者が自殺したことにより、損害が拡大あるいは発生した場合に、過失相殺の法理を類推適用して、損害賠償額を減額するという法律構成を、両判決ともとっています。ただし、類推適用する条文について、No.70の判決は、不法行為に関する民法772条2項「被害者...

2006年5月24日
No.71「精神病院入院中の患者が病室で自殺。病院側に損害賠償を命ずる判決」

福岡地方裁判所小倉支部 平成11年11月2日判決(判例タイムズ1069号232頁) (争点) 患者の自殺は予見可能であったか 夜間の巡回体制を整えること等によって、患者の自殺は回避可能であったか 損害 過失相殺 (事案) 患者A(死亡当時52際の男性)は、平成8年10月3日、アルコール依存症、精神分...

2006年5月24日
No.70「医師が手術の際、静脈と動脈を見誤って動脈切断。右下肢の切断を余儀なくされた患者が悲観して自殺。病院側に損害賠償責任を認める判決」No.70「医師が手術の際、静脈と動脈を見誤って動脈切断。右下肢の切断を余儀なくされた患者が悲観して自殺。病院側に損害賠償責任を認める判決」

高松地方裁判所観音寺支部 平成16年2月26日判決(判例時報1869号71頁) (争点) 医師の過失 医師の過失と患者の死亡との因果関係 損害賠償額 (事案) 患者(昭和23年生まれの女性)Aは、平成11年6月25日、Y医師が経営するYクリニックで両足の冷えについて診察を受け、その際、Y医師は、両下...

2006年4月14日
選択の視点【No.68、69】

今回は、末期医療・延命治療における医師の行為が問題となった判決を2件ご紹介します。 医療技術が発展した現代においては、治癒の見込みのない患者に対する延命医療の限度が問題とされ、患者の自己決定権・生命の質の観点から、「安楽死」「尊厳死」についても様々な議論が行われています。「わかりやすい医療裁判所処方...

2006年4月14日
No.69「難病のALS患者が痴呆の症状を伴っており、人工呼吸器装着に関する患者や家族の意思が明らかでなかった場合には、医師が患者に人工呼吸器を装着すべき義務を負わないとした地裁判決」

仙台地方裁判所平成12年9月26日判決(訟務月報48巻6号1403頁) (争点) 医師らに人工呼吸器装着義務違反があるか 医師らに説明義務及び意思確認義務違反があるか 患者の生命の危険が差し迫った時期における医師らの所為に過失があるか (事案) 患者C(昭和7年生まれの女性)は、平成4年9月末ころ「...

2006年4月14日
No.68「医師が末期患者に薬物を注射して患者が死亡。医師による積極的安楽死として許される要件を満たしていないとして、医師に殺人罪を適用。懲役2年、執行猶予2年に処した判決」

横浜地方裁判所 平成7年3月28日判決(判例時報1530号28頁) (争点) 安楽死の要件 本件医師の具体的行為の評価 量刑の理由 (事案) A医師(昭和59年医師免許取得)は、T大学医学部助手として、同大学医学部内科学四教室に所属していた。出向を終えた平成3年4月1日付けで、T大学附属病院での勤務...

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