医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2009年2月 4日
選択の視点【No.136、137】

今回は、医師の意見書や鑑定書についての高等裁判所の評価の誤りを最高裁判所が指摘した判決を2件ご紹介します。 両判決とも、高等裁判所には「採証法則違反」があったと判示しています。「採証法則違反」とは、法律に明記されているものではありませんが、例えば「正当に証拠を考慮すれば反対の事実認定に至ったはずの場...

2009年2月 4日
No.137「ポリープ摘出手術を受けた患者が術後9日目に出血性ショックで死亡。医師の過失を否定した高裁判決には採証法則違反があるとして、高裁判決を破棄して差し戻した最高裁判決」

最高裁判所平成18年11月14日 判例時報1956号77頁 (争点) 主治医が追加輸血を行わなかったことについて過失がなかったとした原審の判断の是非 医師の行為と心肺停止という結果との因果関係を否定した原審の判断の是非 損害 (事案) 患者A(死亡時56歳の男性)は平成12年2月、近隣の医院で受けた...

2009年2月 4日
No.136「MRSAで入院患者が死亡。医師の過失を否定した高裁判決には経験則または採証法則違反があるとして、高裁判決を破棄して差し戻した最高裁判決」

最高裁判所平成18年1月27日 判例タイムズ1205号146頁 (争点) 医師による抗生剤の投与に過失がなかったとした原審の判断の是非 (事案) 患者A(死亡時81歳の女性)は、平成4年11月13日、脳梗塞の発作を起こし、Y共済組合の開設するY病院に入院した。平成4年12月末ころ、Aに38度台の熱が...

2009年1月16日
選択の視点【No.134、135】

今回は、一般的な適応を欠く施術を行う場合の説明義務に関連して病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.134の事案では、関連事件として、市民病院を開設する市が患者とその保証人に対して168万0220円医療費の請求をしました。しかし、裁判所は、医療費のうち、エンボライゼイショ...

2009年1月16日
No.135「患者が、心房粗動に対するカテーテルアブレーションの治療実施中に死亡。医師が説明義務を怠ったとして、医療法人に慰謝料の損害賠償義務を認めた判決」

大阪地方裁判所平成17年1月28日 判例タイムズ1209号218頁 (争点) 患者の心房粗動に対してカテーテルアブレーションの適応があったか 担当医は本件治療に対する説明義務を怠ったか (事案) 患者A(死亡当時57歳の女性)は、平成13年5月3日朝方より、M救命医療センターを受診し、その際、眼前暗...

2009年1月16日
No.134「適応のないエンボライゼイションの施術により患者に下半身麻痺の障害。市民病院の医師と市に対して損害賠償義務を認めた判決」

静岡地方裁判所平成3年10月4日 判例タイムズ773号227頁 (争点) 患者にエンボライゼイションの適応があったか 医師はエンボライゼイションの危険性等につき説明義務を果たしたか (事案) 患者X1(大正12年生まれで当時57歳の女性)は、昭和15年に結核に罹患したものの自宅で長期療養しており、目...

2008年12月18日
選択の視点【No.132、133】

今回は、薬剤投与後の経過観察・監視義務に関連して病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.132の判決紹介にあたっては、一審判決(前橋地方裁判所平成11年2月3日判決・判例時報1698号114頁)も参照しました。また、病名や医療従事者の職業名につきましては、現在の用語に改め...

2008年12月18日
No.133「陣痛促進剤の副作用により胎児が低酸素状態になり出生後に死亡。陣痛促進剤投与後の分娩監視を怠ったとして病院側に損害賠償義務を認めた判決」

神戸地方裁判所尼崎支部平成15年9月30日 判例タイムズ1144号142頁 (争点) 胎児仮死の原因 医師らに陣痛促進剤投与後の分娩監視義務違反が認められるか (事案) 患者X(当時29歳の初妊婦)は平成12年5月25日、妊娠37週6日目で前期破水のため、16時15分ころ、Y町村共同国保Y病院経営事...

2008年12月18日
No.132「統合失調症の患者に対して鎮静剤を投与後、患者が鎮静剤の呼吸抑制作用により舌根沈下を生じ、窒息死。病院の責任を否定した地裁判決を変更して、病院側の経過観察義務違反を認めた高裁判決」

東京高等裁判所平成13年9月12日 判例時報1771号91頁 (争点) 患者Aの死因 薬剤投与上の注意義務の有無 鎮静剤投与後の経過観察義務違反の有無 (事案) 患者A(死亡当時42歳の男性)は、家業である酒類等販売業に従事し、主として配達等をしていたが昭和49年ころから統合失調症に罹患し、医療法人...

2008年11月12日
選択の視点【No.130、131】

今回は、最高裁判所で控訴審判決が破棄され、差し戻された事案を2件ご紹介します。 No.130の判決については、差し戻し後の控訴審で、控訴棄却の判決(医師の過失を否定する判決)が出たようです(仙台高裁平成19年12月21日判決・判例時報1990号183頁に掲載された判例評釈より)。 No.131の判決...

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