医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2009年5月 1日
No.141「看護師が誤って毒物を患者に投与し、高次脳機能障害の後遺症が発生。患者が糖尿病の三大合併症を発症していたこと等を考慮して、平均余命より短い余命での損害賠償を認定した判決」

東京地裁平成20年2月18日 判例タイムズ1273号270頁 (争点) 患者X1は血糖コントロール値が「不良」で、糖尿病の三大合併症も発症していたが、余命(逸失利益及び将来の付添看護費用算定の前提)をどの程度と算定するべきか 症状固定後の治療関係費及び差額室料は本件事故と相当因果関係にある損害か (...

2009年5月 1日
No.140「肝硬変の患者への投与薬剤についての保険適用の便宜上、病名を肝炎として診療を継続。医師が正しい病名を失念した結果、肝細胞癌の発症を看過し患者が死亡。適切な検査及び治療を行っていれば、発見可能時から5年程度(現実の死亡時よりも3年8ヶ月)の余命が期待できたとして、医師の損害賠償義務を認めた判決」

東京地裁平成18年9月1日 判例タイムズ1257号196頁 (争点) 腫瘍マーカー検査及び画像検査を行わなかったため肝細胞癌を発見できなかったことにつきY1医師に過失はあったか Y1医師の過失と死亡との間に因果関係はあるか 損害 (事案) 患者A(死亡時45歳・日本に帰化する前は中国籍の男性)は、昭...

2009年3月 4日
選択の視点【No.138、139】

今回は、豊胸手術の再手術に関する医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 両判決の事案とも、第1回目の手術の結果が芳しくなくて2回目の手術に至ったのですが、裁判所は2回目の手術における過失だけを認めました。 また、その後他院で両胸についてさらに手術を受けているのですが、裁判所は片胸だけについて...

2009年3月 4日
No.139「豊胸手術後に生じた左右の乳房の高さの差異を修正するため、左胸部を再手術。左胸に二段腹状の段差が発生。再手術時に被膜、瘢痕の除去を十分に行わなかったとして医師の損害賠償義務を認めた判決」

大阪地裁平成13年4月5日 判例時報1784号108頁 (争点) 生理食塩水バッグ挿入による豊胸手術後に患者の乳房の高さが左右非対称になったことについて医師の過失はあったか 生理食塩水バッグを再挿入した手術の後に患者の左胸部に段差が生じたことについて医師の過失はあったか 損害 (事案) 患者X(手術...

2009年3月 4日
No.138「両胸の豊胸手術後に右胸の創部が開き、シリコンパックを再挿入したところ右胸部膿瘍が発症。再挿入手術適応の判断と滅菌措置に過失があるとして、故人となった医師の相続人に損害賠償義務を認めた判決」

京都地裁平成5年8月25日 判例タイムズ841号211頁 (争点) シリコンパック挿入による豊胸手術の手術手技に過失はあったか シリコンパックを再挿入した手術の手術適応判断及び滅菌措置に過失はあったか 損害 (事案) 患者X(手術当時28歳の既婚女性)は、平成元年4月13日、O市とK市の2カ所で美容...

2009年2月 4日
選択の視点【No.136、137】

今回は、医師の意見書や鑑定書についての高等裁判所の評価の誤りを最高裁判所が指摘した判決を2件ご紹介します。 両判決とも、高等裁判所には「採証法則違反」があったと判示しています。「採証法則違反」とは、法律に明記されているものではありませんが、例えば「正当に証拠を考慮すれば反対の事実認定に至ったはずの場...

2009年2月 4日
No.137「ポリープ摘出手術を受けた患者が術後9日目に出血性ショックで死亡。医師の過失を否定した高裁判決には採証法則違反があるとして、高裁判決を破棄して差し戻した最高裁判決」

最高裁判所平成18年11月14日 判例時報1956号77頁 (争点) 主治医が追加輸血を行わなかったことについて過失がなかったとした原審の判断の是非 医師の行為と心肺停止という結果との因果関係を否定した原審の判断の是非 損害 (事案) 患者A(死亡時56歳の男性)は平成12年2月、近隣の医院で受けた...

2009年2月 4日
No.136「MRSAで入院患者が死亡。医師の過失を否定した高裁判決には経験則または採証法則違反があるとして、高裁判決を破棄して差し戻した最高裁判決」

最高裁判所平成18年1月27日 判例タイムズ1205号146頁 (争点) 医師による抗生剤の投与に過失がなかったとした原審の判断の是非 (事案) 患者A(死亡時81歳の女性)は、平成4年11月13日、脳梗塞の発作を起こし、Y共済組合の開設するY病院に入院した。平成4年12月末ころ、Aに38度台の熱が...

2009年1月16日
選択の視点【No.134、135】

今回は、一般的な適応を欠く施術を行う場合の説明義務に関連して病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.134の事案では、関連事件として、市民病院を開設する市が患者とその保証人に対して168万0220円医療費の請求をしました。しかし、裁判所は、医療費のうち、エンボライゼイショ...

2009年1月16日
No.135「患者が、心房粗動に対するカテーテルアブレーションの治療実施中に死亡。医師が説明義務を怠ったとして、医療法人に慰謝料の損害賠償義務を認めた判決」

大阪地方裁判所平成17年1月28日 判例タイムズ1209号218頁 (争点) 患者の心房粗動に対してカテーテルアブレーションの適応があったか 担当医は本件治療に対する説明義務を怠ったか (事案) 患者A(死亡当時57歳の女性)は、平成13年5月3日朝方より、M救命医療センターを受診し、その際、眼前暗...

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