医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2010年2月18日
No.161「医師が気管支喘息の患者に気管支拡張剤を処方して患者に不整脈が悪化。処方自体についての債務不履行は否定し、薬剤の副作用についての医師の説明義務違反を認めた判決」

札幌地方裁判所平成19年11月21日判決 判例タイムズ1274号214頁 (争点) 医師が気管支拡張剤を処方したことが債務不履行に当たるか 医師が気管支拡張剤の副作用を説明しなかったことについて説明義務違反が認められるか (事案) 患者X(昭和26年生まれの男性)は、心臓の既往症があり、平成9年ころ...

2010年2月18日
No.160「医師が、喘息患者の発作に際し、当該患者がステロイド常用状態にあることに気付かずに交感神経刺激剤を吸入させたところ、患者が死亡。医師の問診義務違反を認めて遺族の請求を認容した地裁判決を取り消して、請求を棄却した高裁判決」

大阪高裁平成8年10月11日判決 判例タイムズ941号253頁 (争点) 医師がステロイド治療歴の有無を問診しなかったことは過失といえるか 医師がステロイド治療をしなかったことは過失といえるか (事案) A(当時24歳の女性)は、気管支喘息発作を発症したため、X1(Aの母親)と共に、Y市が運営するY...

2010年1月 8日
選択の視点【No.158、159】

今回は検査中の医療事故について、病院側の責任が認められた高等裁判所の裁判例を2件ご紹介します。 両事案とも、患者側の個人的な要因が症状の発生・悪化に影響を及ぼしているとして、損害の公平な分担の趣旨から、過失相殺の規定を準用して、損害額から3割を減額しています。 No.158の事案では、一審判決が患者...

2010年1月 8日
No.159「胃透視検査の際に投与されたバリウムが患者の腸内に滞留した結果、S状結腸に穿孔を発症。医師が検査後に下剤を投与しなかったことについて過失を認めた高裁判決」

大阪高等裁判所平成20年1月31日 判例時報2026号16頁 (争点) 医師が胃透視検査後、患者に下剤を処方投与しなかったことについて過失が認められるか。 (事案) 患者X(検査当時66歳の男性)は平成12年5月6日、Y医師が開設する内科、小児科、放射線科等の診療科目を標榜するYクリニック(以下、本...

2010年1月 8日
No.158「健康診断の採血時に患者の神経が損傷され、RSD又はカウザルギーが発症。患者の損害賠償請求を棄却した一審判決を破棄して、請求を認めた高裁判決」

仙台高裁秋田支部平成18年5月31日判決 判例タイムズ1260号309頁 (争点) 臨床審査技師の採血行為に過失はあったか 過失により患者にRSD又はカウザルギーが発症したか 損害(損害に関してXの個人的要因が寄与したか) (事案) X(昭和33年生まれの女性)は、昭和59年に県の教職員に任命され、...

2009年12月 8日
選択の視点【No.156、157】

今回は、生まれてくる子供が障害を負っている可能性についての説明義務が争点となった判決を2件ご紹介いたします。 No.156の判決はいったん控訴されたものの、その後取り下げられています。 No.157の判決は、上告・上告受理の申立がなされましたが、それぞれ棄却・不受理となっています。No.157の判決...

2009年12月 8日
No.157「遺伝性の難病に罹患した子が生まれる可能性についての両親の質問に対する医師の説明義務違反を認め、医師の勤務する社会福祉法人に対し、出生した難病の子の介護費用等の損害賠償を命じた判決」

東京高等裁判所平成17年1月27日 判例時報1953号132頁 (争点) 医師がペリツェウス・メルツバッヘル病(PM病)に罹患した子が生まれる可能性を説明しなかったことについて、説明義務違反が認められるか 子がPM病を発症したことによる介護費用等の積極損害が損害として認められるか (事案) X1及び...

2009年12月 8日
No.156「39歳の女性がダウン症児を出産。羊水検査の実施依頼に応じなかった点及びダウン症児出産の危険率等を説明しなかった点について医師の過失を否定した地裁判決」

京都地裁平成9年1月24日判決 判例タイムズ956号239頁 (争点) 妊婦からの羊水検査の申し出に対する医師の対応に過失はあったか 医師には、妊娠中絶に間に合う適切な時期に妊婦に対して羊水検査について説明し、これを実施すべき義務はあるか (事案) X1(昭和29年生まれの女性)は、平成5年、X2(...

2009年11月 4日
選択の視点【No.154、155】

今回は、産婦人科医が業務上過失致死罪で起訴されたのに対し、過失が認められないとして無罪判決を言い渡した事例2件をご紹介します。 刑事事件は、人に刑罰という重大な不利益を課すものであることから、民事事件と異なり、検察官は、「合理的な疑いを入れる余地のない程度」まで立証しなければならないという重い立証責...

2009年11月 4日
No.155「産婦人科医師が全前置胎盤患者の癒着胎盤を剥離し、大量出血により患者を死亡させたとして、業務上過失致死罪で起訴されたが、医師に剥離を中止して子宮摘出の移行すべき義務はなかったとして無罪を言い渡した判決」

福島地方裁判所平成20年8月20日 医療判例解説16巻20頁 (争点) 医師の胎盤剥離行為と患者の死亡との間に因果関係が認められるか 医師が胎盤剥離を継続すれば、胎盤剥離面から大量出血し、患者の生命に危険が及ぶおそれがあることを予見できたか 医師の患者の死亡を回避するための措置として剥離行為を中止し...

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