医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2010年5月11日
選択の視点【No.166、167】

今回は病院の患者に対する説明・顛末報告義務が問題となった事案を2件ご紹介します。 No.166の事案は、蕁麻疹の治療に来た患者に対して、医師がそもそも効能・効果のない薬剤の注射を指示し、さらに准看護師が注射すべき薬剤を取り違えるという経過をたどり、患者に重大な後遺症が残りました。この点について裁判所...

2010年5月11日
No.167 「治療により身体障害1級の後遺症が残った患者が診療録等を示しながらの顛末報告を病院に求めたが、病院は報告をしなかった。病院の診療録等に基づいて顛末を報告する義務違反を認め、患者の慰謝料請求を認めた地裁判決」

大阪地裁平成20年2月21日判決 医療判例解説24号16頁 (争点) 病院は患者に対し診療契約上の付随義務として診療録等の開示義務を負うか 病院は患者に対し診療録等に基づいて顛末を報告する義務を負うか 病院に顛末を報告する義務違反があったか (事案) X(男性)は、舌白板症と診断され、平成3年4月2...

2010年5月11日
No.166 「蕁麻疹患者に対する静脈注射を指示した医師が注射の場に立ち会わず、准看護師が薬剤を誤投与し、患者に重篤な後遺症。医師、准看護師の治療上の過失及び病院の調査・報告義務違反を認めて患者と両親に損害賠償を命じた地裁判決」

京都地裁平成17年7月12日判決 判例時報1907号112頁 (争点) 医師と准看護師の医療行為に過失はあったか 病院に事故原因の調査・報告義務違反があったか (事案) X1(事故当時6歳の女児)は、平成13年1月15日、体中に赤い発疹のようなものが出たため、Y1医療法人(以下、Y1法人)の設置する...

2010年4月 5日
選択の視点【No.164、165】

今回は小児科での診察・治療についての過失の有無が争点となった判決を2件ご紹介します。 No.164では、当初の主治医が3月31日(土曜日)に退職し、翌日の4月1日の日曜日から新しい主治医に変わり、4月2日には大学病院への転院が予定されていた事案ですが、裁判所は患者の急速な症状の悪化を踏まえるならば、...

2010年4月 5日
No.165「幼児が転倒した際に割り箸をのどに刺して死亡。医師が頭蓋内損傷を予見することは不可能であったとして、病院側の責任が否定された高裁判決」

東京高等裁判所平成21年4月15日判決 判例時報2054号42頁 (争点) 医師には、割り箸片による頭蓋内損傷を予見することが可能であったか 患者が死亡するに至った経緯・原因について医師らが患者の両親に虚偽の説明を行ったか (事案) 患者A(平成6年10月生、当時4歳9か月)は、平成11年7月10日...

2010年4月 5日
No.164「結核性髄膜炎に罹患していた女児に重度の脳障害の後遺症が発生。結核性髄膜炎の診断のために必要な検査等を怠ったとして、病院側の損害賠償責任を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所平成20年4月22日判決 判例時報2028号41頁 (争点) 結核性髄膜炎の疑いを持って検査を行い治療を開始すべきであったのに、これを怠った過失が医師にあるか 医師の過失と後遺障害との因果経過の有無及び損害額の算定方法 (事案) 患者X(平成8年生まれの女児、当時4歳9ヶ月)は、平成1...

2010年3月 8日
選択の視点【No.162、163】

今回は、終末期医療の適否が問題となり、医師の責任が認定された事案を2件ご紹介します。 No.162は、マスコミでも大きく報道された刑事事件です。紹介にあたっては、一審判決(横浜地方裁判所平成17年3月25日判決・判例タイムズ1185号114頁)及び控訴審判決(東京高等裁判所平成19年2月28日判決・...

2010年3月 8日
No.163「末期癌患者に一般的な医学的知見の裏付けを欠く治療を医師が実施。有効な治療を受けられるという患者の期待権侵害を認め、医師に損害賠償義務を命じた地裁判決」

山口地裁岩国支部平成19年1月12日判決 判例タイムズ1247号310頁 (争点) 医師の債務不履行((1)診断義務違反、(2)治療義務違反、(3)説明義務違反、(4)転医勧告義務違反)の有無 医師の債務不履行と因果関係のある損害 (事案) A(昭和27年生まれの女性)は、平成14年8月26日にB病...

2010年3月 8日
No.162「気管支喘息の重積発作で入院した患者から気管内チューブを抜管し、筋弛緩剤を投与して患者を死亡させた医師が殺人罪で起訴。法律上許容される治療中止に当たらないとした最高裁判決」

最高裁第三小法廷平成21年12月7日決定 裁判所時報1497号8頁 (争点) 医師の気管内チューブの抜管行為は法律上許容される治療中止に当たるか (事案) A(当時58歳)は、平成10年11月2日、仕事帰りの自動車内で気管支喘息の重積発作を起こし、同日午後7時ころ、心肺停止状態でB病院に運び込まれた...

2010年2月18日
選択の視点【No.160、161】

今回は喘息の持病のある患者に関する判決を2件ご紹介します。 No.160の事案では、一審の神戸地方裁判所の判決(判例時報1446号121頁)も参考にしました。一審では必要かつ十分な問診がなされなかったとして、患者遺族の請求が一部認容されましたが、控訴審では問診をしていても患者の症状が急激に悪化する危...

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