医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2010年12月 7日
No.181「大腸癌の摘出手術後、縫合不全が原因で患者に肺炎、ARDSが発症し、後遺症が残る。適切な対処をしなかった医師および病院の過失ないし債務不履行を認めた高裁判決」

高松高裁平成22年2月25日判決 判例時報2086号53頁 (争点) 医師らの縫合不全の予防・発見に関する注意義務違反の有無 手術後の縫合不全と肺炎、ARDSとの間の因果関係の有無 損害 (事案) X(本件事故当時70歳の女性)は、Y1財団法人の経営するY病院の内科に通院し、メニエール病の治療を受け...

2010年12月 7日
No.180「胃癌手術後、患者が胆汁腹膜炎を発症して死亡。医師が手術後にサンプチューブを不適切な位置に固定したため縫合不全が生じたとして、病院の責任を認めた地裁判決」

大津地裁平成5年9月27日判決 判例時報1488号135頁 (争点) 医療法人に損害賠償責任はあるか 損害(逸失利益) (事案) A(本件当時67歳の女性)は、胃付近に痛みを覚え、昭和61年5月6日、医療法人Yが開設、経営するY病院内科を外来受診し、胃吻合部潰瘍及び胃癌の疑いのため、同月9日、Y病院...

2010年11月 4日
選択の視点【No.178、179】

今月は、医師の治療行為について業務上過失致死罪の成否が問題となった刑事事件の判決を2件ご紹介します。 No.178の判決は、腹腔鏡下手術のミスで医師3名が業務上過失致死罪に問われた事案です。新聞報道によれば、一審判決に対して医師3名が控訴したのですが、このうち執刀医は控訴を取り下げ、地裁判決が確定し...

2010年11月 4日
No.179「幼児が転倒し、綿あめの割りばしがのどに刺さったとして救急車で搬送されたが、帰宅後死亡。業務上過失致死罪で起訴された医師につき、注意義務違反はなく、救命可能性も確実ではなかったとして、一審の無罪判決を維持した東京高裁判決」

東京高等裁判所平成20年11月20日 判例タイムズ1304号304頁 (争点) 医師に割りばしの刺入による頭蓋内損傷を疑い、その確認をする義務があったといえるか 結果回避可能性ないし医師の不作為と患児の死亡との因果関係が認められるか (事案) 患者A(平成6年生まれの幼児)は、平成11年7月10日午...

2010年11月 4日
No.178「前立腺癌の男性に対して、大学病院の医師らが腹腔鏡下前立腺全摘術を施行したが、患者が死亡。業務上過失致死罪で起訴された執刀医につき、禁錮2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した地裁判決」

東京地裁平成18年6月15日判決 (出典ウェストロー) (争点) 専門的裁量性を有する医師の医療事故における刑事責任と量刑の事情 (事案) 患者A(以下、A)は、平成10年6月ころから、B1大学B2病院(以下、B病院)泌尿器科の外来を訪れていたが、平成14年9月、Y2医師(Aの主治医)やY3医師(泌...

2010年10月 6日
選択の視点【No.176、177】

今月は、妊産婦の死亡事案について、病院側の責任が認められた判決と否定された判決を1件ずつご紹介いたします。 No.176の判決紹介にあたっては、一審判決(東京地裁平成17年9月30日判決)も参考にしました。この事案では、患者に死亡に至る症状が生じた原因として、一審判決は、「出血性ショックの遷延及び重...

2010年10月 6日
No.177「町立病院に入院中の妊婦が意識を消失し、母体搬送依頼から約4時間後に国立病院に搬送されたが、死亡。町立病院の医師の過失を否定し、仮に過失があったとしても救命可能性がなかったとして因果関係も否定して遺族の損害賠償を棄却した一審判決」

大阪地方裁判所平成22年3月1日 判例タイムズ1323号212頁 (争点) 医師がCT検査を実施しなかったことについて過失があるか 仮に過失があったとして、患者が死亡したこととの間に相当因果関係が認められるか (事案) 患者A(昭和49年生まれの女性)は、平成18年8月7日、分娩のためN県S郡のY町...

2010年10月 6日
No.176「分娩直後に患者が昏睡状態に陥り、数日後に死亡。病院の過失を否定した第一審判決を取消し、適切な輸液の懈怠、全身状態の管理・観察の懈怠、高次医療機関への搬送の遅れに基づく病院の損害賠償責任を認めた高裁判決」

東京高裁平成19年3月27日判決 判例タイムズ1250号266頁 (争点) 出血性ショックを看過し適切な輸液及び輸血を怠った過失はあるか 患者の全身状態の管理・観察を怠った過失はあるか 高次医療機関への搬送が遅れた過失はあるか (事案) A(事故当時28歳の健康状態良好な専業主婦)は、平成14年初め...

2010年9月15日
選択の視点【No.174、175】

今月は、絞扼性イレウスによる死亡事案について、病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.174の判決紹介にあたっては、一審判決(金沢地裁平成18年9月4日判決・判例時報1980号128頁)も参考にしました。なお、この事案では、医師の過失について一審判決は「10月1日午後0時までに、...

2010年9月15日
No.175「小学生が絞扼性イレウスにより死亡。経過観察中にイレウスの症状が見られたにもかかわらず、所要の検査を行わなかったことにつき、医師に過失を認めて病院に損害賠償義務を認めた判決」

横浜地方裁判所平成21年10月14日 判例時報2069号98頁 (争点) 医師に患者のイレウスを疑い所要の検査を行う注意義務違反があったか 医師が検査義務を果たしていれば、患者の救命の高度な蓋然性があったといえるか (事案) 患者A(平成9年生まれの男子)は平成18年2月20日午前3時45分ころ、心...

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