医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2012年1月13日
選択の視点【No.206、207】

今回は、がん患者に対する治験薬投与後、患者が死亡した事案で、病院側の責任が認められた判決(No.206)と否定された判決(No.207)をご紹介します。 No.206の判決では、治験薬を投与した県立病院勤務の医師につき、県の履行補助者として、患者の人権を尊重しつつ、専門医として要求される高度の知識、...

2012年1月13日
No.207「大学病院で、肺がんの治験薬投与から一ヶ月後に患者が死亡。当該治験薬の投与及び当該治験の説明に関する医師の注意義務違反を否定した地裁判決」

大阪地方裁判所 平成23年1月31日判決 判例タイムズ1344号180頁 (争点) 医師の注意義務(適正診療義務ないし説明義務)違反の有無 (事案) A(昭和9年生まれの男性)は、16歳で来日し、大学を卒業した後、複数の会社を設立し、代表取締役を務めるなどの活躍をし、B国立大学校から名誉工学博士の学...

2012年1月13日
No.206「県立病院で卵巣癌の患者に承認前の治験薬を投与したところ、約4ヶ月後に患者が死亡。担当医師の注意義務違反、インフォームド・コンセント原則違反等を認めた地裁判決」

名古屋地方裁判所 平成12年3月24日判決 判例時報1733号70頁 (争点) 注意義務違反の有無 インフォームド・コンセント原則違反の有無 (事案) A(当時45歳の女性)は、昭和63年4月19日、H病院において子宮筋腫と診断され、同月28日にその切除手術が行われたが、開腹の結果右卵巣に悪性腫瘍が...

2011年12月13日
選択の視点【No.204、205】

今回は、精神科・精神神経科の診察に関する判決を2件ご紹介いたします。No.204は患者遺族の請求が一部認められ、No.205では、患者の請求が全く認められませんでした。 No.204の判決は、患者が従前通院して治療を受けていた病院と自殺する直前に入院した病院のそれぞれの責任について、連帯責任ではなく...

2011年12月13日
No.205「精神神経科の医師が、患者に対し、「人格障害」であるとの病名を告知。これによりPTSD(外傷後ストレス障害)を発症したとする患者の請求を一部認めた控訴審を破棄し、医師の言動と患者の症状との間の相当因果関係を否定し、患者の請求を認めなかった最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 平成23年4月26日判決 判例タイムズ1348号92頁 (争点) 医師の言動と患者の症状との間の因果関係の有無 (事案) X(昭和38年生まれの女性)は、看護師として勤務していたが、改めて大学の法学部に進学するため退職し、大学卒業後の29歳頃から11年間にわたり町役場に勤務して...

2011年12月13日
No.204「精神病院に通院していた患者が他の精神病院に入院したが、入院の約5時間後の深夜に自殺。両病院の責任を認め、損害賠償の責任の範囲を別々に認めた高裁判決」

東京高等裁判所 平成13年7月19日判決 判例タイムズ1107号266頁 (争点) Y1病院の責任 Y2病院の責任 (事案) A(自営業・30代男性)が、ひどい頭痛と肩こりのため、平成5年2月8日にY1社会福祉法人が経営するY1病院精神科を訪れた。Y1病院のH医師は、当初は神経症と診断し、これに即し...

2011年11月 4日
選択の視点【No.202、203】

今回は、手術後に患者に生じた症状(No.202ではブドウ状球菌の繁殖、No.203では脊髄損傷)の原因について、具体的な特定がなされないまま(No.202では、A注射器具、B施術者の手指、C患者の注射部位のいずれかの消毒が不完全であったという選択的認定、No.203ではA手術機器の振動による脊髄損傷...

2011年11月 4日
No.203「交通事故により後遺症を負った患者の症状が、市立病院での手術後に悪化。医師の過失を概括的に認定し、患者の損害賠償請求を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所 平成20年2月15日判決 判例タイムズ1284号267頁 (争点) 手術の際に脊髄を損傷させた過失を認定するにあたり、脊髄損傷の原因の具体的特定がどこまで必要か (事案) 交通事故の後遺症で四肢全体に重度の障害があったX(手術時68歳の鍼灸師の男性)が、Y市の開設するY病院において、...

2011年11月 4日
No.202「産婦人科病院の医師が無痛分娩方法として麻酔注射をしたところ、分娩後の妊婦に硬膜外膿瘍および圧迫性脊髄炎が発症。麻酔注射の際の消毒の不完全につき過失を認定するにあたり、どの部分の消毒が不完全であったかを明示しなかった控訴審判決を維持した最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 昭和39年7月28日判決 判例タイムズ165号78頁 (争点) 麻酔注射の際の消毒が不完全であるという過失の認定事実として、消毒が不完全な部分を確定しなければいけないか (事案) X(当時37歳の女性)は、昭和34年10月27日分娩のため、Y医師が経営するY婦人科病院(以下、「...

2011年10月 7日
選択の視点【No.200、201】

今回は、幼児や乳児の患者が死亡した事案で、病院側の責任が否定された判決と認められた判決を1件ずつご紹介いたします。 両事案とも、解剖が実施されませんでした。 No.200の判決では、遺族側の主張に沿う内容の医師の鑑定書と証言がありましたが、裁判所は、これらが、遺族の陳述書に依拠して、診察に当たった医...

ページの先頭へ