医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2012年8月 8日
No.221「子宮内膜症疑いの妊婦に対して、医師の処方とは異なる抗癌剤が渡され、出生した男児に重度の障害。患者親子側の請求を棄却した地裁判決を取り消し、病院の不法行為責任を認めて親子側の請求を認容した高裁判決」

福岡高等裁判所平成8年9月12日判決 判例時報1597号90頁 (争点) 抗癌剤であるユーエフティの服用と障害発生との因果関係の有無 薬剤を交付した職員の過失の有無 (事案) X2(女性)は、昭和59年7月17日、Y法人の経営する病院(以下、Y病院とする)の医師であるH医師の診察を受けた。X2は、こ...

2012年8月 8日
No.220「医院事務員が、糖負荷検査に使用するブドウ糖と誤って届けられたフッ化ナトリウム等の混合粉末を受領、調合し、患者に服用させた結果、患者が死亡。事務員および開業医につき、業務上過失致死罪の成立を認めた上で、罰金刑を宣告した地裁判決」

函館地裁昭和53年12月16日判決 判例タイムズ375号157頁 (争点) Y2事務員に業務者性は認められるか Y2事務員に注意義務違反はあったか Y1医師に注意義務違反はあったか (事案) Y1医師は昭和14年10月にI市においてY内科医院(以下「Y医院」という)を開業し医師として医療業務に従事し...

2012年7月 5日
選択の視点【No.218、219】

今回は入院患者に褥瘡が発症したことについて、病院側の責任が認められた判決と否定された判決を1件ずつご紹介します。 No.218の事案は、一審では2時間ごとの体位変換を行ったとする病院側の主張が採用されて患者の請求が棄却されましたが、控訴審では、看護記録に2時間ごとの体位変換の記載が無いことなどを理由...

2012年7月 5日
No.219「大学病院に入院した患者に褥瘡が発症。病院の褥瘡発生防止義務違反を否定して患者の請求を棄却した地裁判決」

横浜地方裁判所平成14年7月16日判決 判例タイムズ1189号285頁 (争点) 褥瘡発生防止義務違反の有無 (事案) X(本件当時59歳の男性)は、平成8年5月2日、発熱、咳、痰等を訴え、学校法人Yが経営するY大学病院(以下Y病院という)内科・外来を受診した。Y病院内科医師はXの胸部エックス線撮影...

2012年7月 5日
No.218「麻疹脳炎で入院していた患者に褥瘡が発症。病院の責任を否定した地裁判決を変更し、診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償責任を認めた高裁判決」

高松高等裁判所平成17年12月9日判決 判例タイムズ1238号256頁 (争点) Y病院が、Xに対し、褥瘡の予防措置を実施したか否か (事案) X(当時38歳の女性)は、平成13年3月16日、Y医療法人の経営する病院(以下、Y病院という)の内科医であるH医師の診察を受け、麻疹及び重症の肺炎(疑い)と...

2012年6月18日
選択の視点【No.216、217】

今回は、手術前に生検をしないまま乳癌の手術を行ったことにつき、病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.216の事案で、裁判所は、当該病院で本件以前に乳房温存療法を実施した例はなく、担当医師が当該病院でも乳房温存療法を採用したいと考えていたことなどの事情を考慮すれば、医師が乳房温存療...

2012年6月18日
No.217「手術前に確定診断をしないまま乳がんと診断し、乳房切除手術、リンパ節郭清をし、術後、内分泌化学療法、放射線治療を行ったが、病理組織検査の結果、非浸潤がんであることが判明した場合に、病院側の過失が肯定された地裁判決」

福岡地方裁判所平成16年2月12日 判例時報1865号97頁 (争点) 医師の過失の有無 プライバシー侵害の有無 (事案) X(昭和38年10月1日生の女性)は、平成10年4月4日、左乳房にしこりがあることから、Y1医療法人の経営するY1病院を受診し、Y1病院に勤務するO医師の診察を受け、触診、超音...

2012年6月18日
No.216「市立病院で、患者の乳腺腫瘍を乳癌と診断し、乳房温存療法による手術を実施したがその後良性と判明。生検を行わずに悪性と診断をした医師の過失を認めて、慰謝料の支払いを市に命じた地裁判決」

名古屋地方裁判所平成15年11月26日判決 判例タイムズ1157号217頁 (争点) 医師が生検を行わず最終診断を癌としたことに過失があるか (事案) X(本件当時45歳の女性)は、平成8年ころ以降、左乳房に示指頭大の無痛性腫瘤があることに気づき、平成9年2月10日(以下平成9年については月日のみを...

2012年5月16日
選択の視点【No.214、215】

今回はMRSA感染について病院の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.214の事案では、病院側は、患者が処方した以外の薬剤を経口服用したり、自己注射をするなど、異常な行動をとっていたことや患者の発言内容から、患者が何らかの作為を行い、それにより感染が発生した可能性が否定できないとの主張を...

2012年5月16日
No.215「市民病院に入院した患者がMRSA敗血症を発生し、転院先の大学病院で死亡。市民病院の担当医らのMRSA感染予防を怠った過失、当該過失と死亡との因果関係を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所平成18年9月14日判決 判例タイムズ1285号234頁 (争点) 感染経路 過失の有無 (事案) A(死亡時21歳の女性・短大生)は、平成8年4月24日、両下肢の皮疹等を訴え、Y1市の開設するY1市民病院皮膚科を外来受診し、5月13日、同病院皮膚科に入院した。担当医師Bは、アレルギー...

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