医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2015年9月10日
選択の視点【No.294、295】

今回は、PTCAにおけるガイドワイヤーにより損傷した際の出血を見落とした医師の過失により、病院側に損害賠償が命じられた事案(No.294)と、カテーテルの挿入・留置について医師の過失はあるものの、不法行為責任は否定されて、遺族が敗訴した事案(No.295)をご紹介します。 No.294の事案で...

2015年9月10日
No.295「大学病院の医師の末期肺がん患者に対する、CVカテーテルの挿入及び留置に関する注意義務違反を認めたが、患者が胸背部痛に苦しんでいた事実あるいは医師の過失と患者に生じた結果との間の因果関係が認められないとして、請求を棄却した地裁判決」

東京地方裁判所 平成22年9月27日判決 判例タイムズ1377号151頁 (争点) CVカテーテルの挿入、留置に係る過失の有無 1の過失と結果(Aの胸背部痛)の発生の有無   (事案) A(昭和22年生・女性・身長約152㎝)は、平成18年1月16日以降、末期の...

2015年9月10日
No.294「PTCAを受けた患者が失血性ショックにより死亡。右腎周囲腔の浸出液を尿漏れと断定して、血管損傷を原因とする腎周囲出血を見落とした過失を認めて病院側に遺族に対する損害賠償を命じた地裁判決」

松江地方裁判所 平成14年9月4日判決 判例タイムズ1129号239頁 (争点) ガイドワイヤーによって腎実質を損傷させた過失の有無 腎周囲出血を見落とした過失の有無 死亡との因果関係の有無   (事案) 患者A(死亡当時62歳の女性)はY病院(Y医療法...

2015年8月10日
選択の視点【No.292、293】

今回は、未破裂脳動脈瘤の手術に関する病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介いたします。 No.292の事案の紹介にあたっては、一審判決(ウエスト・ロー収録)及び差し戻し後の東京高裁判決(平成19年10月18日判決・判例タイムズ1264号317頁)も参考にしました。 差し戻し後の東京高裁判決...

2015年8月10日
No.293「未破裂脳動脈瘤の予防手術として脳動脈瘤塞栓術を実施中に、動脈瘤壁穿孔により術中出血を生じ、出血性脳梗塞により患者に後遺障害が残留。医師に手技上の過失があったとして、原審を維持し病院側の控訴を棄却した高裁判決」

名古屋高等裁判所 平成25年11月22日判決 判例時報2246号22頁 (争点) 血管内治療の手技上の過失(十分なマーカー合わせを怠った注意義務違反)の有無   (事案) 平成18年1月30日、X(昭和30年生まれの女性・専業主婦)は、K総合病院脳神経外科の検診で、右中大脳動...

2015年8月10日
No.292「未破裂動脈瘤の手術における、担当医師の説明義務違反の有無は、開頭手術とコイル塞栓術それぞれに関する知見やカンファレンスで判明した開頭手術に伴う問題点を説明したか否か、いずれの手術を選択するのか、いずれの手術も受けずに保存的に経過を見ることとするのかを熟慮する機会を改めて与えたか否かなどにより判断されるべきとして、事件を差し戻した最高裁判決」

最高裁判所 平成18年10月27日判決 判例タイムズ1225号220頁 (争点) 未破裂動脈瘤手術における担当医師の説明義務の内容   (事案) 大学教授であった患者Aは、平成7年11月10日、講義中に意識障害を起こし、B病院において一過性脳動脈虚血発作の可能性を指摘された。...

2015年7月10日
選択の視点【No.290、291】

今回は、膀胱癌に関する裁判例を2件ご紹介します。1件は医師の責任が否定され、もう1件は医師の責任が認められています。 No.290の事案では、患者遺族は、イレウスによる脱水症または多血症が患者の脳障害の原因となったと主張しましたが、裁判所は、脱水症の発症も多血症の発症も認められないとして患者遺...

2015年7月10日
No.291「尿管皮膚瘻術等を受けた患者が膀胱癌により死亡。医師の検索治療義務違反を認めて病院側に損害賠償を命じた高裁判決」

名古屋高等裁判所 平成26年5月29日判決 判例時報2243号44頁 (争点) H医師が、各種検査を実施してAに膀胱癌が発症しているか否かを検索した上で、当該検査結果に応じた治療をすべき義務に違反したか Y病院の医師に診療契約上の説明義務違反があったか   (事案...

2015年7月10日
No.290「膀胱癌患者が、膀胱全摘出術及び回腸導管手術後にイレウスを発症し、その後死亡。術後管理につき病院側の責任が否定された地裁判決」

宮崎地方裁判所 平成8年6月28日判決 判例時報1603号99頁 (争点) Y病院の医師による診療行為について、Aのイレウスに対する、吸引療法の遅滞又は水分電解質の補給不足による注意義務違反が存し、これによりAが死亡したかどうか   (事案) 患者A(死亡当時77歳の会社役員...

2015年6月10日
選択の視点【No.288、289】

今回は薬剤投与に関する医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.288の事案では、裁判所は死亡した患者の夫の慰謝料算定にあたり、次のように判示しています(一部省略・用語置き換えあり)。 「手術そのものは成功したにもかかわらず、本件抗癌剤の不当投与という全くの医師のミスにより、最愛...

ページの先頭へ