医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2017年12月 8日
No.349 「甲状腺疾患の治療中の患者が肝がんに罹患。病院側には肝機能悪化時に肝臓専門医を紹介すべき義務の違反があるが、損害のうち、患者が各種検査を受診しなかった過失や、患者がB型肝炎ウイルスキャリアであったことの損害への寄与を考慮し、過失相殺(患者の過失及び寄与4割)をした地裁判決」

京都地方裁判所平成 28年2月17日判決 判例時報2332号 58頁 (争点) XとY医療法人との間におけるXのB型肝炎の治療を目的とする診療契約の成否 Y医療法人の債務不履行の有無 Y医療法人の債務不履行とXの肝硬変及び肝がん罹患との因果関係の有無 過失相殺の可否 (事案) X(昭和27年生まれの...

2017年12月 8日
No.348 「高校1年生の男子生徒が糖尿病性昏睡により死亡。急性胃炎と誤診した医師の過失を認めたうえ、患者生徒に保護者の付添がなく正確な症状が伝えられなかったことと、患者生徒の多飲多食が病状を悪化させたとして過失相殺(患者生徒の過失7割)をした地裁判決」

広島地方裁判所尾道支部所平成元年5月25日判決 判例時報1338号 127頁 (争点) Y医師の診断が債務不履行にあたるか否か 患者側に過失があるか否か (事案) A(当時16歳の県立高校1年生男子。身長157.4㎝、体重94.6㎏)は、昭和56年8月7日、母であるX2に対して、足がふらふらする、体...

2017年11月 9日
選択の視点【No.346、347】

今回は、クモ膜下出血の診断ができずに患者が死亡に至った事案で病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.346の事案では、外科医院を開業している医師が、患者に腰椎穿刺を試みたがうまく刺入することができず断念し、再度試みなかった理由として、患者の腰椎の著明な変形を挙げましたが、裁判所は、...

2017年11月 9日
No.347 「頭痛を訴え来院した患者のクモ膜下出血を市立病院の内科医、神経内科医らが見落とし、その後、患者が死亡。脳神経外科医に連絡してCT写真の読影を依頼するなどの措置を講じなかった過失を認定し、更に、患者が腰椎穿刺を拒否したことにつき、十分な説明がなかったとして過失相殺を否定した高裁判決」

名古屋高等裁判所平成14年10月31日判決 判例タイムズ1153号 231頁 (争点) Y病院医師らの注意義務の有無 過失相殺の有無 (事案) 平成7年4月19日昼頃、A(52歳の女性)は激しい頭痛、悪心及び嘔吐が生じたことから、翌20日午後9時30分ころ、Y市の開設するY市民病院(以下、Y病院とい...

2017年11月 9日
No.346 「クモ膜下出血により、患者が植物状態となりその後死亡。入院先の外科医院の医師は髄液検査を断念してクモ膜下出血との診断に至らず、諸検査設備のある病院への転送措置もとらなかった。医師の過失を認めて遺族への損害賠償を命じた地裁判決」

広島地方裁判所昭和62年4月3日判決 判例タイムズ657号 179頁 (争点) Y医師の責任の有無 因果関係の有無(Y医師の過失とA死亡との間の因果関係の有無) (事案) 昭和55年9月18日午前4時30分頃、A(当時60歳の女性)は自宅台所で突然倒れて昏睡状態に陥ったため、救急車でY医師の経営する...

2017年10月 6日
選択の視点【No.344、345】

今回は小児科での死亡事故で、転医義務が争点となった事案を2件ご紹介します。 No.344の事案では、医師側は、診察日に医師が処方した薬を患者(2歳の女児)の両親がその指示通りに服用させなかったことなどを理由に、過失相殺を主張しましたが、裁判所は、母親が直後の受診日に医師に薬の不服用について告げ、医師...

2017年10月 6日
No.345 「国立病院入院中の11歳の男児が重篤な喘息発作を発症し、転医先で死亡。国立病院の小児科医師に転医措置を怠った過失があるとされた地裁判決」

奈良地方裁判所 平成5年6月30日判決 判例タイムズ851号 268頁 (争点) 主治医の転医義務違反の有無 主治医の転医義務違反とAの死との因果関係の有無 (事案) A(事故当時11歳の男児)は、生後7ヶ月の頃から喘鳴をしばしば起こすようになり、その発作が起こる度に近隣の医院等に通院し、あるいは入...

2017年10月 6日
No.344 「内科小児科に通院していた2歳の女児が、肺膿瘍、膿胸になり、呼吸不全及び心不全により死亡。医師が、検査、転院の措置を怠ったために女児が適切な治療を行う機会を失い死亡に至ったとして、医師の過失を認めた地裁判決」

横浜地方裁判所川崎支部 平成3年4月25日判決 判例時報1406号70頁 (争点) 医師の過失の有無 (事案) 昭和56年4月3日、A(2歳の女児)は風邪ぎみであったため、Y医師の開業する内科小児科医院(以下、Y医院という。)でY医師の診察を受けた。そのときのAは、咳が少し出て、扁桃腺が腫れ、胸部に...

2017年9月 8日
選択の視点【No.342、343】

今回は、高齢者の転倒事故に関する地裁判決を2件ご紹介します。 医療機関での事故ではありませんが、高齢者の転倒は医療機関でも発生する事故ですので、訴訟に至った場合の判断につき、医療従事者にも有意義な事例と思われます。 紹介にあたっては、平成15年当時のNo.342の判決文中で「痴呆」とある箇所は「認知...

2017年9月 8日
No.343 「通所介護サービスを利用していた87歳女性が、送迎バスの乗降の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折。施設運営会社が速やかに医療機関に連絡し必要な措置を講ずべき義務に違反したとして慰謝料20万円の支払いを命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成 25年5月20日判決 判例時報2208号 67頁 (争点) 施設運営会社が、事故当時利用者を常時見守るなどして転倒を防止すべき義務に違反したか否か 施設運営会社が、事故の後、医療機関に速やかに連絡して利用者に医師の診察を受けさせるべき義務に違反したか否か (事案) X(大正11年...

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