医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2019年8月 9日
No.389 「腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた患者に大腸癒着の後遺症が残る。医師が術中に電極を腸管に接触させて穿孔させたか、または、腸管壁の近くを剥離して熱損傷を与えて術後に穿孔させたかいずれかの過失があると判断した地裁判決」

横浜地方裁判所平成13年7月13日判決 判例タイムズ1183号314頁 (争点) 腹腔鏡下胆嚢胆摘出術により十二指腸に穿孔を生じさせた過失の有無 (事案) 平成9年2月26日、X(昭和10年生まれの女性・公園内で売店を経営)は、Y社団法人の経営する病院(以下、「Y病院」という。)で成人病検診を受けて...

2019年8月 9日
No.388 「前立腺肥大症により経尿道的前立腺切除術を受けた患者に尿失禁等が発生。術後の出血に対する経尿道的凝固止血術の際、医師が外尿道括約筋を損傷した過失があるとした地裁判決」

横浜地方裁判所川崎支部平成12年3月30日判決 判例タイムズ1101号232頁 (争点) 医師が外尿道括約筋を損傷した過失の有無 (事案) 平成3年8月24日、X(妻子がおり、稼働している男性)は、Y医療法人の経営する病院(以下、「Y病院」という。)泌尿器科でH医師の診察を受け、1年前から残尿感、頻...

2019年7月 9日
選択の視点【No.386、387】

今回は、患者の重大な疾患を発見できなかった医師の過失が認められた裁判例2件ご紹介します。 No.386の事案では、検査の懈怠により患者のスキルス胃癌を発見できなかった病院の債務不履行と患者の精神的損害との因果関係についても争点となりました。裁判所は、平成2年2月ないし3月ころに再度胃のレントゲン検査...

2019年7月 9日
No.387 「腰背部痛を訴える患者に対する診察に過失があり、腹部大動脈瘤の破裂を発見できず、患者が死亡。遺族の請求を全部棄却した一審判決を変更して、病院側に損害賠償を命じた高裁判決」

広島高等裁判所平成30年2月16日判決 医療判例解説77号42頁(2018年12月号)  (争点) 診察時に、患者は腹部大動脈瘤が既に破裂し、又は切迫破裂の状態にあったか否か 診察をした神経内科医師に過失があったか否か (事案) 患者A(69歳の男性)は、平成9年末頃から平成10年2月にかけて、脳血...

2019年7月 9日
No.386 「内科から泌尿器科に転科した入院患者につき膀胱後部の腫瘍がスキルス胃癌の転移によるものと発見できず、その後、患者が自殺。転科から4、5ヶ月経過後の胃部の内視鏡、レントゲン検査を懈怠した病院の債務不履行責任を認めた地裁判決」

広島地方裁判所平成7年12月5日判決 判例時報1589号95頁 (争点) 入院当初の検査は本件診療契約に照らし十分なものであったか否か 泌尿器科への転科後の検査等は本件診療契約に照らし十分なものであったか否か (事案) A(当時54歳・旅館経営の男性)は、平成元年9月9日、強度の腰痛を訴え、B診療所...

2019年6月 7日
選択の視点【No.384、385】

今回は、術後管理について病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介いたします。 No.384の事案では、病院側は、患者が脳梗塞の後遺症で半身不随の状態にあったし、約2年程以前に意識不明の状態になったこともあり、高血圧の治療中であるという既往症の存在や、胃がんとその手術に伴う侵襲、高齢(78歳)といった...

2019年6月 7日
No.385 「市立病院で乳房膿瘍切開排膿手術を受けた患者が退院後突然死。患者の動脈血のガス分析結果が強いアシドーシスの状態を示していたのに、医師が原因の究明及び解消のための治療を早急に行わず退院を許可した点に過失があったとした高裁判決」

大阪高等裁判所 平成10年10月22日判決 判例時報1695号87頁 (争点) 患者の死因 医師の過失または債務不履行責任の有無 (事案) Y市の経営する病院(以下、「Y病院」という。)の救急担当であったS医師は、A(34歳の女性)が低酸素状態あるいは肺梗塞に陥っていないかを判断するためにAの動脈か...

2019年6月 7日
No.384 「胃癌の手術及び胆嚢摘出手術を受けた患者が死亡。大学病院の担当医師らが、術後、患者の呼吸機能の回復状態についての注意を充分にしなかったとして大学病院側の過失を認めた地裁判決」

横浜地方裁判所川崎支部 平成5年12月16日判決 判例タイムズ860号241頁 (争点) 患者の死因 術後管理に関する医療担当者らの過失の有無 (事案) A(明治42年生の男性)は、昭和53年ころの脳梗塞の既往があり、以後、下肢能力の低下が認められるものの、日常生活にはさほどの不自由さはなく、また3...

2019年5月10日
選択の視点【No.382、383】

今回は分娩に関連して、産婦人科医師の責任が認められた事案を2件ご紹介いたします。 No.382の事案では、医師は、分娩監視記録の上からは、過強陣痛をうかがわせるものはないことを理由に、子宮破裂の切迫兆候の発見はできなかったとして、監視義務違反はないと主張しました。 しかし、裁判所は、分娩監視装置は、...

2019年5月10日
No.383 「胎盤機能不全による非対称性発育遅延に陥った胎児が子宮内で死亡。産婦人科医師が、胎児の発育状態などを確認し適切な治療方法を採るべき注意義務に違反したとした地裁判決」

東京地方裁判所平成14年2月25日判決判例タイムズ1138号 229頁 (争点) 胎児の死因 産婦人科医師に注意義務違反が認められるか否か (事案) X1(昭和45年生まれの女性)は、平成11年(以下、特段の断りがない限り全て平成11年の出来事とする。)8月11日から、第一子の出産(出産予定日は9月...

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