医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2020年6月10日
No.409 「医師の血糖値測定義務違反と新生児が低酸素性虚血性脳症を発症したこととの間に因果関係を認めて、一審判決を変更し、病院側に損害賠償を命じた高裁判決」

大阪高等裁判所平成31年4月12日判決 判例タイムズ 1467号71頁 (争点) 血糖値測定義務違反と後遺症との間の因果関係の有無 (事案) X(男児)平成22年12月18日午前8時12分頃、Y医療法人の運営する産婦人科専門病院(以下、「Y医院」という。)において、自然分娩により娩出された。Y医院で...

2020年6月10日
No.408 「癒着胎盤にもかかわらず、分娩直後に胎盤を用手剥離した結果、患者に下垂体前葉機能低下症(シーハン症候群)の後遺障害が残存。病院に損害賠償を命じた地裁判決」

神戸地方裁判所平29年5月23日判決 判例タイムズNo.1468 225頁 (争点) 用手剥離における注意義務違反の有無 用手剥離における注意義務違反とシーハン症候群発症との因果関係の有無 患者の後遺障害の程度 (事案) X(昭和46年生まれの女性)は、平成18年4月26日、卵巣チョコレート嚢胞、子...

2020年5月12日
選択の視点【No.406、407】

今回は、手術後の処置・管理につき病院側の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.406の事案では、患者遺族は、病院が脳腫瘍(髄芽腫)に罹患した患者(三歳児)に化学療法としてカルボプラチン単剤を投与して、補助療法を施さなかった点にも過失があると主張しました。 しかし、裁判所は、カルボプラチンは...

2020年5月12日
No.407 「クローン病治療のため回腸結腸吻合部の切除術を受けた患者が、術後、出血性ショックを起こし、脳に重篤な障害が残ったことにつき、大学病院側に対し、出血性ショックの可能性を念頭に置いた術後管理を怠った過失を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所平成31年4月25日判決 判例時報2428号16頁 (争点) 術後管理の過失の有無 (事案) X1(1971年生まれの男性・歯科医)は、平成13年8月、慢性、難治性の炎症性疾患であるクローン病(小腸大腸型)を発症し、平成14年4月22日、学校法人Y1大学の開設・運営する病院(以下、「Y...

2020年5月12日
No.406 「三歳児が脳腫瘍摘出手術を受けた後、MRSAによる化膿性髄膜炎に罹患し死亡したのは、市立病院の医療関係者らが患部の消毒や被覆について適切な処置を講じなかったためとして市の過失を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所平成13年10月30日判決 判例タイムズ1106号187頁 (争点) 脳腫瘍摘出手術後、患者を髄膜炎(MRSA)に感染させた過失の有無 (事案) A(死亡時3歳の乳児)は、平成4年10月に出生し、平成5年3月以降、鼻汁、咳、喘息、中耳炎等の症状を訴えて、Y市の経営・管理する病院(以下、...

2020年4月15日
選択の視点【No.404、405】

今回は、医師の過失と患者に生じた後遺障害・損害との因果関係が争点となった裁判例を2件ご紹介します。両事案とも誤診・見落としに関する医師の過失(注意義務違反)については当事者間に争いがない事案です。 No.404の事案では、入院期間(394日)中の患者の妻の付添看護費(患者の請求は日額3000円)につ...

2020年4月15日
No.405 「国立大学病院心療内科の医師らが頭部CT検査報告書中の脳腫瘍疑いの指摘を見落して脳腫瘍を放置した過失と、患者が後医で受けた脳腫瘍摘出術後に生じた後遺障害との因果関係を認めた地裁判決」

福岡地方裁判所令和1年6月21日判決 判例時報2428号118頁 (争点) Y病院診療内科医師らの過失と後遺障害との因果関係の有無 (事案) X(平成元年生まれの女性)は、平成18年10月26日、Y国立大学法人の設置、運営する病院(以下、「Y病院」という。)心療内科に入院し、同月30日、頭部CT検査...

2020年4月15日
No.404 「市立病院で 患者の化膿性椎間板炎を腰椎椎間板ヘルニアであると誤診したことにより、適切な治療がなされず患者に後遺障害が生じたことにつき、将来介護費を含む損害賠償を認めた地裁判決」

名古屋地方裁判所平成28年11月25日判決 医療判例解説2018年2月号(第72号)72頁 (争点) 医師の注意義務違反により生じた損害の額 (事案) 平成23年4月22日、X1(昭和40年生まれの男性)は、腰痛を訴えて、W整形外科を受診し、ボルタレン座薬及び腰傍脊椎神経ブロックを施されたが、腰痛が...

2020年3月10日
選択の視点【No.402、403】

今回は気管切開カニューレに関連して病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.402の事案では、裁判所は、患者が心静止に陥った原因については、カニューレにティッシュを詰められたことによる窒息以外の機序があり得ないとまではいえないとしながら、カニューレに詰められていたティッシュが事故後...

2020年3月10日
No.403 「国立大学病院で患者が気管切開カニューレから痰の吸引を受けた際に容態が急変し、低酸素脳症による遷延性意識障害の後遺症を負う。吸引時のアセスメント実施義務違反の過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成31年1月10日判決 判例時報2427号32頁 (争点) 看護師らが気管吸引時にアセスメントを実施し、監視することを怠った過失の有無 看護師らの過失と患者に生じた結果(遷延性意識障害と低酸素脳症)との因果関係 (事案) X1(本件事故当時、20歳で薬学部2年生の男性)は平成23年8...

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