医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2025年7月10日
選択のポイント【No.530、531】

今回は、放射線治療に関して、医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.530の紹介にあたっては、一審判決(東京地裁平成4年4月10日判決)も参考にしました。 No.530の事案では、耳鼻咽喉科の医師が、患者の頸部腫脹を悪性腫瘍と判断し、放射線照射が必要であると考え、放射線科に治療を依頼...

2025年7月10日
No.531「肺の腺様嚢胞癌の治療中の患者が放射線脊髄症により死亡。国立病院の医師らに脊髄の放射線照射を回避すべき措置を怠った過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成7年9月22日判決 判例タイムズ916号192頁 (争点) 放射線治療の方法に過失があるか否か *以下、原告2名をあわせて◇ら、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和7年生まれの主婦)は、昭和59年5月22日国である△の設置・経営する病院(以下「△病院」という。)で検査を受けたと...

2025年7月10日
No.530「放射線治療を受けた患者が、速中性子線照射の後遺症で放射線脊髄炎となったのは、大学病院の医師に放射線治療の継続について過失があったからと判断された高裁判決」

東京高等裁判所平成6年1月24日 判例タイムズ873号204頁 (争点) 医師に注意義務違反(速中性子線治療を継続すべきでないのにこれを継続した注意義務違反)があったか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(昭和57年当時42歳)は、昭和55年4月21日、5、6年前から右頸部にリ...

2025年6月10日
選択のポイント【No.528、529】

今回は麻酔注射における医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.528の事案では、患者の損害について、裁判所は、患者(もともと針生検前の麻痺の程度が相当重い糖尿病患者)は、本件医療事故がなかったとしても車椅子での生活を余儀なくされ日常的に介護を要する状態であり、家事労働に従事することは...

2025年6月10日
No.529「エコーガイド下マンモトーム生検の局所麻酔を受けた後に気胸を発症。医師に麻酔針を漫然と胸腔内に進行させた手技上の注意義務違反を認めた高裁判決」

東京高等裁判所平成28年12月19日判決 医療判例解説(2017年6月号)68号79頁 (争点) 手技上の注意義務違反があったか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(昭和43年生まれの女性・ピアノ講師及びピアニスト)は、平成23年1月19日、Wクリニックの診療情報提供書を持参し...

2025年6月10日
No.528「脊椎麻痺の原因解明のため針生検を実施。針生検に先立つ局所麻酔の際、医師が麻酔針で患者の脊髄神経を損傷した結果患者の筋力・知覚麻痺の増悪と自力排尿不能をもたらしたと推認して病院側に損害賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成6年2月28日判決 判例タイムズ849号225頁 (争点) 針生検を行う際の医師の注意義務違反と患者に生じた結果と因果関係 *以下、原告を◇1ないし◇4、被告を△1及び△2と表記する。 (事案) ◇1(夫と2人の子を持つ女性)は、かねてから糖尿病を患っていたが、昭和61年8月4日、...

2025年5月12日
選択のポイント【No.526、527】

今回は高齢者の褥瘡に関する裁判例を2件ご紹介します。 No.526の事案では、被告となった老人ホーム側は、入所者の死亡の原因はガス壊疽の急激な悪化によるものであり、入所者が病院へ救急搬送された後、速やかにガス壊疽との診断がされ、これに対する適切な治療が行われていれば、救命され、又は救命されたであろう...

2025年5月12日
No.527「入院中の患者に褥瘡が発生し、転院先の病院で死亡。医療従事者に褥瘡発生を防止すべき義務を怠った過失及び褥瘡を適切に治療すべき義務を怠った過失を認めた地裁判決を維持した高裁判決」

東京高等裁判所平成30年9月12日判決 判例時報2426号32頁 (争点) 褥瘡発生を防止すべき義務を怠った過失の有無 6月20日の初回の褥瘡回診後、褥瘡を適切に治療すべき義務を怠った過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和10年生まれの男性。平成25年6月20...

2025年5月12日
No.526「介護有料老人ホームの入所者の褥瘡が悪化し、細菌感染による敗血症を発症して死亡。老人ホーム側の債務不履行責任が認められた地裁判決」

横浜地方裁判所平成24年3月23日判決 判例時報2160号51頁 (争点) 入所者の褥瘡の悪化に関して老人ホーム側に債務不履行・注意義務違反があるか否か *以下、原告を◇1ないし◇4、被告を△と表記する。 (事案) A(大正7年生まれ・死亡当時87歳の男性)は、平成3年以降、糖尿病にり患しており、平...

2025年4月10日
選択のポイント【No.524、525】

今回は、看護師による針の穿刺における過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.524の事案では、後遺障害の程度や心因性の傷害による素因減額の有無も争点となりました。この点につき、裁判所は、CRPSは多様な症状を呈することがあり、その機序はなお明らかにされていないことを考慮に入れても、控訴人の...

ページの先頭へ