医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.156、157】

今回は、生まれてくる子供が障害を負っている可能性についての説明義務が争点となった判決を2件ご紹介いたします。

No.156の判決はいったん控訴されたものの、その後取り下げられています。

No.157の判決は、上告・上告受理の申立がなされましたが、それぞれ棄却・不受理となっています。No.157の判決紹介にあたりましては、一審の東京地裁平成15年4月25日判決(判例時報1832号141頁)も参考にしました。

No.156の判決は、現在の母体保護法の前身である優生保護法施行当時で、かつ羊水検査が大学病院等の特定の施設、機関で実施されていた当時の判決です。 No.157の判決について、一審では「介護費用等を損害と評価することは、(出生した子供)の生をもって、両親に対して健常児と比べて上記介護費用等の出費が必要な分だけ損害を与えるいわば負の存在であると認めることにつながる」との懸念から、介護費用の損害賠償義務を否定したのですが、控訴審ではこの点につき「この特別な費用を損害として認めることは、(出生した子供)がPM病の患者として社会的に相当な生活を送るために、両親らが物心両面の負担を引き受けて介護、養育している負担を損害として評価するものであり、子供の出生、生存自体を両親らの損害として認めるものではない。上記のような費用を損害と評価することが子供の生を負の存在と認めることにつながり、社会的相当性を欠くということはできない」という趣旨の判示をしています。

非常に難しい問題ですが、両判決とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2009年12月 8日
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