今回は、転送義務違反があったとして病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。
No.146の事案では、日曜日に急性心筋梗塞を発症した患者に対応した日直医の専門病院への転送要請が約70分遅かったことを捉えて過失であるとの判断がなされています。病院側は転送要請するためには血液検査の結果を添えることが事実上求められているため、血液検査の結果が出るまで転送措置を開始しなかったことはやむを得なかったという主張をしたようですが、裁判所は、心筋梗塞の急性期における血液検査が無意味であることくらい、24時間の急性心筋梗塞患者の救急受け入れを実施している専門病院はよく理解しているはずであり、そのような専門病院が、心筋梗塞に典型的な心電図所見や臨床症状が見られる患者について、さらに血液検査の実施を要求するとは考えられないとして病院側の主張を退けました。
No.147の事案では、午前7時30分の転院に対して、午前2時30分ころには転院を決断すべきであったとして、4時間の遅延につき過失を認めています。
ただし、午前2時30分に転院を決断したとしても、新生児に実際よりは軽度の後遺障害が生じた蓋然性が認められ、その場合にも労働能力を一定程度喪失すると考えられるとして、損害賠償額のうち、逸失利益について5割の減額を認めました。
両判決とも実務の参考になろうかと存じます。