医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.96、97】

今回は、入院中の患者のケアに関する判決を2件ご紹介します。

No.96の判決は、病院側の過失を認め、患者が最重症のウイルス性脳炎に罹患していたことから、過失がなくても最終的な救命は困難であったとして、死亡と過失の因果関係は認めませんでした。しかし、適切な治療を受ける期待及び延命利益の喪失が、患者自身にとっても、親族にとっても法的保護に値する利益であるとして、これらの利益が奪われたことに対する病院側の責任を認めました。

No.97の判決は、いわゆる床ずれに関する判決です。この事案では、入院患者が糖尿病に罹患し、自力で寝返りも出来ない状態であったこと等が考慮されて、医師の過失が認定され、死亡との因果関係も肯定されました。病院側は、看護体制上、限られた看護師数では3時間毎の体位変換が事実上限度があり、床ずれ防止・治療のために2時間毎の体位変換の実施は事実上不可能であったという主張をしたようですが、裁判所は、そうであれば、2時間毎の体位変換を実施できる看護体制にある医療機関に転医させるなどの措置を講ずるべきであったのであり、看護体制を理由に正当化しようとする医師の態度は医療従事者の姿勢として甚だ遺憾であると判示しました。

両判決とも実務において参考になると思います。

カテゴリ: 2007年6月 5日
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