今回は、市立病院での診療拒否に関する判決を2件ご紹介します。
なお、No.94の判決は、一審判決後、控訴審で和解が成立したとのことです。
医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と規定しています。医師の応招義務を規定したものです。
救急医療体制は、患者の症状に応じて第一次(外来診療レベル)、第二次(入院治療を要するレベル)、第三次(生命の危険を伴う重症レベル)の3段階に分かれ、救命救急センターは第三次救急医療を行う目的で設立されています。
判決中にある「救急告示病院」とは消防法に根拠を置く「救急医療告示病院」のことですが、平成10年にこの名称は廃止され、24時間体制の「救急病院」「救急診療所」および輪番制で救急患者を受け入れる「輪番制病院」の3者と組み替え直されました。
(高橋茂樹他著「STEP公衆衛生第5版」84頁)
No.95の事案では、患者本人の同意なしにHIV検査が実施されています。この点について、患者遺族側が法的責任を追及しない旨裁判中に述べたため、判決では検討を加えられていませんが、患者のプライバシーとの関係で問題となる余地がある措置であったと思われます。
また、慰謝料額の算定にあたり、患者が不法残留外国人であったことや、本国(タイ)の平均賃金が日本の約10分の1であることが考慮されていますが、本国の生活水準を慰謝料の算定にあたって斟酌すべきかどうかについては、裁判例も分かれています。