今回は、歯科医師の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。
歯科医療には、一般医療と比べて、「治療に用いられる材料・材質に選択の余地がある」「保険診療の対象外の治療(自費診療)が多い」「容貌に及ぼす影響が大きい」「復元が困難・不可能な治療が多い」「緊急性に乏しい場合もある」といった特色が挙げられます。
そして、治療の前提としての歯科医師の説明も、これらの特色に配慮する必要があります。
No.86の判決は、ブリッジ補綴治療についての歯科医師の債務不履行が争点となっていますが、事案としては、患者が当該ブリッジ補綴治療に同意する際、「当該ブリッジは自費治療で高価であるが審美面及び耐久・保持の面で優れており、相当な長期の年数にわたって保持できる」との歯科医師の説明があったにもかかわらず、数年で脱離がはじまったという経過をたどったものです。
No,87の判決は、説明義務違反が争点の一つとなった事案で、裁判所は、説明義務違反を認定したうえで、歯科医師が説明義務を尽くしていれば、患者が当該処置に同意することはなかったと判断しています。