今回は、薬剤投与によって患者がショック状態になった事案に関する判決を2件ご紹介します。
どちらの判決も、医師が患者のアレルギー体質を認識、あるいは認識しえた点を重視しているといえます。
No.84の判決は、腰痛等の治療のため、ビタノイリン、ノイロトロピンを投与したところ、患者がショック状態になり心臓が停止した結果、一命はとりとめたものの、後遺症が残った事案です。
ビタノイリン、ノイロトロピンの使用説明書にはいずれも、ショック等の副作用についての記載があり、医師は、従前、患者が入院中にビタノイリン、ノイロトロピンを投与した際に発疹等の過敏反応を認めていることから、医師の過失を認めています。
No.85の判決は、インフルエンザの治療のため、デキサン、ノイロトロピンを静脈注射したところ、患者がショック状態になり死亡した事案です。
医師は、患者に花粉症及びピリンアレルギーの既往症があることを認識していたことから、その当時、その症状に対して、デキサン、ノイロトロピンを静脈注射することは合理性が見出し難いとして、医師の過失を認めました。
両判決とも損害額の算定にあたって、個々の患者、患者の家族の事情を具体的に考慮している点も参考になります。