今回は、患者の容態が急変した事案についての判決を2件ご紹介します。
「因果関係」や「過失」を考える上で参考になろうかと思います。
No.72は、損害賠償請求訴訟における因果関係の立証の程度についての指導的役割を果たしている判決です。そして、この最高裁判決で肯定された因果関係を前提に、差し戻しされた高裁判決(東京高裁昭和54年4月16日・判例時報924号27頁)は、担当医師の過失を認めて、患者の請求額の一部を認容しました。患者が脆弱な血管の持ち主で出血性傾向のある3歳の幼児という特性を有している点が、担当医師の過失の認定で重視されています。判決紹介文中では、一審判決(東京地方裁判所昭和45年2月28日判決・判例時報607号54頁)での患者請求額及び差戻し後の控訴審での患者の請求額と高裁の認容額についてもご紹介しています。
No.73は、医師の指示で行われたキシロカインの希釈液でうがいをした患者がアナフィラキシーショックを起こした事案で、患者に問診した上でうがいをさせた医師の責任が否定されました。
なお、それぞれの判決文で「看護婦」と記載されている箇所は「看護師」に変更してご紹介しています。