医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.520、521】

今回は、妊産婦に対する医師や助産師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.520の事案では、一審判決(静岡地裁沼津支部平成30年3月7日判決)も参考にしました。同事案では、一審裁判所も控訴審裁判所も、患者の最初の肺血栓塞栓症の発症については、医師の過失はないと判断しました。しかし、肺血栓塞栓症の再発に関して、控訴審裁判所は一審とは異なり、医師の過失を認めました。

また、控訴審裁判所は、本件再発のようなケースについての症例報告等の文献がなく、めずらしいケースということができるとしても、臨床の場では、肺動脈塞栓症は急死する危険があるためICUで監視を継続して安静にしていることが通常であることから症例報告がないとも考えられると指摘して、医師の過失を認めた判断を左右しないと判示しました。

No.521の事案では、病院側は、他院への患者の救急搬送が断られていなければ、患者を救命できた可能性が高いから、助産師の過失と患者の死亡との間の因果関係は切断されると主張しました。

しかし、裁判所は、救急搬送が断られていなければ、患者を救命できた可能性が高いとしても、患者の死亡は、本件子宮破裂によって惹起された危険が現実化したものであると評価せざるを得ず、本件子宮破裂と患者の死亡との間の因果関係を否定する理由とはならないと判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2025年2月10日
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