医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.504、505】

今回は、新生児の脳性麻痺につき、医師の責任が認められた地裁判決を2件ご紹介します。

No.504の事案では、被告の医師は、△は、新生児の脳性麻痺は、出生時に既に存した先天的疾患によると主張しました。

しかし、裁判所は、事実経過によれば、新生児は、吸引分娩で出生したものの、外見上異常はなく、出生体重も成熟児のそれであって、出生の翌々日までは、特に異常なく過ごしていることが認められ、また、認定した事実に、証拠を総合すれば、出生前後の新生児には、低血糖症や脱水症の原因となるような疾病が存したことを認めるに足りるだけの症状はなく、出生から翌日早朝までの体重減少も、生理的減少の範囲に止まっていたことが認められると判示しました。さらに、嘔吐の原因についても、証拠によれば、医学文献上、中枢神経疾患に伴う嘔吐として、新生児期には明確な基礎疾患を見いだし得ない病的嘔吐がある旨の記載がなされていることも認められるところであると判示して、以上によれば、新生児の低血糖症及び脱水症は、出生後の何等かの原因による、嘔吐及び哺乳力不足から生じたものと推認せざるを得ず、この推認を覆すに足りる証拠はないとして被告医師の主張を採用しませんでした。

No.505の事案では、被告の医師は、新生児の脳性麻痺の原因は、出生前の原因や遺伝的な原因等様々なものが考えられ、核黄疸と限定することはできないと主張しました。

しかし、裁判所は、脳性麻痺の種別と患者の現在の症状によりある程度特定した原因が考えられるというのが現在の医学界における通説的見解と認められると判示し、被告医師の主張に副う証拠に記載されている見解は、一般論として脳性麻痺の原因に出生前の要因も考えられることを述べるに過ぎず、証人の証言も、本件では核黄疸はなかったという被告医師の主張を前提事実としたうえで、上記一般的見解を本件に敷衍したものに過ぎず、採用の限りではないと判示して、被告医師の反論反証を排斥しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2024年6月10日
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