医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.500、501】

今回は、薬剤の投与に関する医師の注意義務違反(過失)が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.500の事案では、病院側は、処方を行わなかったことにつき、十二指腸潰瘍に対する間歇療法(再発の都度、初期療法を繰り返す)に合致するものであるから、過失とならないと主張しました。

しかし、裁判所は、本件事案が潰瘍個体とその背景因子に照らし、間歇療法を採用することが医師の裁量の範囲内であったという点についての具体的な主張立証はないと指摘しました。さらに、医学的知見に照らし、間歇療法にせよ維持療法にせよ、服薬量の減量ないし中断を伴うことから、いずれも潰瘍が治癒した段階で行うべき療法であって、内視鏡的治癒が確認されるまでは投薬を続けるものとされているにもかかわらず、被告医師は、与薬を行わなかった日までの間に、患者の潰瘍の治癒につき、内視鏡的確認を行っていないと判示し、被告医師の主張は前提を欠くものであるとして、これを採用しませんでした。

No.501の事案では、病院側は、患者が禁煙指導を受けながら喫煙を続けたことを損害額の算定において考慮すべき旨主張しました。しかし、裁判所は、脳梗塞のリスク評価指標であるCHADSスコアにおいて喫煙が脳梗塞のリスク因子とされていないことに鑑みれば、患者の喫煙と心原性脳梗塞の発症との関係は不明というほかないとして、病院側の主張を採用しませんでした。

また、患者が入院期間中に、一時的に介護老人保健施設に入所したことについて、医師の注意義務違反により、患者に重度の左片麻痺等が残存したことに鑑みれば、治療費用、入院雑費等、入院慰謝料の算定にあたっては、介護老人保健施設への入所についても、入院と同様に扱うのが相当であると判示しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2024年4月10日
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