今回は、検査に関連した誤診について、医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介いたします。
No.486の事案では、病院側は、2回の診察時に子宮外妊娠の診断に必要不可欠とされているhCG検査を実施した旨主張しました。
しかし、裁判所は、2回の診察の際に作成されたカルテにはいずれもhCG検査を実施した旨の記載がなく、「2回とも陰性であったから単なる記載漏れである」との医師の供述については、カルテに検査の記載がなければ、検査料を請求できない可能性もあり、陰性であったことが診療上意味がないとはいえず、むしろ重要な検査データであって、医師としては記載するのが通常であると考えられるところ、2回とも記載漏れが生じたというのは不自然であること等から、病院側の主張を採用しませんでした。
No.487の事案では、原審(一審)の横浜地方裁判所横須賀支部平成30年3月26日判決も参考にしました。
同事案で、病院側は、主治医が患者の症状について心房細動であると確定診断をした根拠について、電気生理学的検査の結果に加えて、患者が同検査時に、従前感じていた症状と同様の感覚があったと述べたことも指摘し、主治医も同旨の陳述・証言を行いました。
しかし、裁判所は、患者が主治医に従前感じていた症状と同様の感覚があったと述べたことについて、カルテ上に記載はないこと、患者が上記検査後に「カテーテルのとき脈が速くなったからその方が気持ちよかった。」と述べ、他方、上記検査以前には主治医に対し、息切れ、動悸、階段を上った後立っているのが苦しい、電車を待っているときにいつもの発作があり、転倒しそうになり、失神前の状態であったと訴えていたことからすれば、患者が従前感じていた症状と上記検査の際に感じていた「気持ちよかった。」という感覚とは全く相容れないものであることは明らかだとして、主治医の陳述書の記載及び証言を信用することはできないと判示し、病院側の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になるかと存じます。