医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.470、471】

今回は、検査・検診における医師の過失・義務違反について、病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.470の事案では、医師の過失と、出生児の障害についての因果関係も争点となりました。

この点につき、裁判所は、医師が正確に妊婦の風疹罹患を判定して伝えていたとしても、出生児の障害は回避できない(障害は誤診に起因するものではなく、診察以前の風疹罹患が起因である)と判示し、中絶されて出生しなかった方が、障害をもって出生してきたことよりも損害が少ないという考え方を採用することはできないし、法律上も、本件のような場合には人工妊娠中絶は認められないと解される以上、中絶は不可能であった等と述べて、医師の過失と出生児の障害との間には因果関係は認められないと判断しました。

しかし、裁判所は、医師が正確に診断し、その結果を妊婦に伝達していたとすれば、原告(出生児の両親)は、中絶は不可能であったにしても、出生までの間に障害児の出生に対する精神的準備ができたはずであるが、現実は、信頼しきっていた医師の診断に反して、先天性風疹症候群に基づく障害をもった子の出生を知らされたわけであるから、その精神的驚愕と狼狽は計り知れないものがある等と判示し、誤診が大きな精神的苦痛を与えたことが推認できるとして、医師側に対して慰謝料の賠償義務を認めました。

No.471の事案では、病院側は、「検診」においては、診療とは異なり、定められた検査方法により異常の有無を調べるにすぎないことに留意する必要があると主張しました。

しかし、控訴審裁判所は、乳がん検診の触診によって、乳がんを疑わせる徴候の1つであるしこりの有無を確認することは、乳がん発見の端緒として基本的かつ重要な事項であるとして、検診と診療とで覚知義務の内容及び程度に相違はないというべきであると判示しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2023年1月10日
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