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選択のポイント【No.464、465】

今回は、入院・入所中の患者・入所者が転倒、負傷した事故につき、病院・施設側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介いたします。

No.464の事案では、裁判所は、貧血で失神を起こして病院内の身体障害者用トイレで転倒した患者について、患者も、排便後立ち上がり、降ろしていた下着を戻した時点で、ナースコールで看護師を呼んだり、トイレ内の手すりに掴まりながら便器の血を拭くなど注意深く行動すれば、転倒事故を避けることができたとして、5割の過失相殺を認めました。

No.465の事案では、施設側は過失相殺(入所者は、ナースコールで介護要員に連絡してポータブルトイレの排泄物容器の処理をしてもらうことができたはずであり、そのように指導されていたにもかかわらず、また、自ら処理する能力に欠けているにもかかわらず、自ら処理しようとした行動には過失がある。)を主張し、入所者側は、ポータブルトイレの清掃は入所者が遠慮しがちな事項であり、職員に頼まず、自分で清掃に赴こうとしたからといって入所者に不注意はないし、入所者に対して安全を配慮すべき義務を負う施設が、過失相殺を主張するのは、権利濫用・信義則違反であると反論しました。

裁判所は、事実関係に照らし、本件において、入所者に過失相殺を認めるべき事情は認められないとして、施設側の過失相殺の主張を採用しませんでした。 

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2022年10月 7日
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