今回は、患者が死亡し、医師が刑事事件で有罪(業務上過失致死罪)となった事案を2件ご紹介します。紹介にあたり、それぞれの出典(判例時報及び判例タイムズ)の解説も参考にしました。
No.460の事案では、誤接続をした看護師につき、既に罰金刑が確定しているとのことでした。
No.461の事案では、肝臓外科の専門医でなく、肝切除術の執刀経験もない医師2名のみでS7に位置する腫瘍の切除術を実施することを避けるべき注意義務があるとされました。この点につき、弁護人は、被告人が平成12年9月に当該病院において、当時の勤務医と共に肝切除術を行い、その際の態勢が本件と同様であったし、小さい病院であれば麻酔科医が常駐しておらず、執刀医が麻酔医を兼ね、また2名の医師で手術を行うことは十分に考えられると主張しました。しかし、裁判所は、弁護人のいう平成12年実施の肝切除術における切除対象の腫瘍は、S5という前区域にあって、開胸により容易に直視下に置くことができた上に、肝表面にあったと認められるから、肝切除術の中でも手技が簡単な部類に属すること、当時の勤務医は、肝臓がんを含む消化器がんの治療を専門としてきたもので、肝切除術の執刀経験はなかったものの、助手として多数の手術立会経験を有していたことから、本件手術と同一に論じることはできないし、そもそも平成12年の肝切除術が十分な態勢によってなされたといえるか自体にも疑問があり、この手術が無事に終了したことから、本件手術を被告人ともう一人の医師とで行うことの安全性を根拠づけることはその点でも失当であると判示し、弁護人の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。