今回は死亡した患者について、必要な検査をしなかった医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。
No.448の事案(胃潰瘍を疑った検査の懈怠)では、病院側は、患者の腹部の経過は順調であったが肺気腫による慢性呼吸器障害に、再発肺がんが両肺に転移播種し、呼吸不全が継続、悪化し死亡に至ったと主張しました。
しかし、裁判所は、肺がんが急に増悪したことを認めるに足りる証拠はないとして病院側の主張を採用せず、胃穿孔及び急性腹膜炎が患者の死期に影響を及ぼさなかったとは認められないとして病院側の責任を認めました。
No.449の事案(呼吸器感染症の病原菌特定検査の懈怠)では、病院側は、患者の症状から肺がん再発の可能性を疑ったことに不合理な点はなく、主治医がとった処置は肺がん再発の可能性のある患者に対するものとして適切であったから過失はない旨主張しました。
しかし、裁判所は、主治医が患者の呼吸器症状の訴えから感染症の疑いをもってレントゲン検査を実施したこと及びレントゲン検査の結果等から肺アスペルギルス症を含む感染症の発症が強く疑われる症状が現出していたことを考慮すると、主治医としては、当然に肺アスペルギルス症の感染を疑うべきであり、肺がん再発の可能性のある患者に対して呼吸器感染症の病原菌を特定(とりわけ肺アスペルギルス症を鑑別)するための諸検査を回避すべき特段の事情は認められないから、主治医が諸検査を行うべき注意義務を免れるものではないことは明らかであるとして、病院側の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。