今回は、入院患者が殺人に及んだことについて、病院の責任が認められた判決をご紹介します。
なお、判決紹介においては、実際の判決文で「看護士」と表記されている箇所は「看護師」に、「精神分裂病」と表記されている箇所は「統合失調症」に、それぞれ変更してご紹介しております。なお、平成17年2月に国会に提出された障害者自立支援法案の附則で、精神保健福祉法(正式名称「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)等の改正が予定されていますが、その改正の中にも統合失調症への呼称の変更が含まれています。
No.42の紹介にあたっては、一審判決(横浜地裁平成4年6月18日・判例時報1444号107頁)及び控訴審判決(東京高裁平成6年2月24日・判例タイムズ872号197頁)も参照しました。
No.42の判決の事案は、措置入院中の患者の事案です。精神保健福祉法第29条1項で「都道府県知事は、第27条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神病院又は指定病院に入院させることができる」と都道府県知事による強制的な入院措置(措置入院)を規定しています。措置入院は、本人の同意なくして入院させるため、厳格な手続要件が定められています。