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選択の視点【No.408、409】

今回は、産(婦人)科の医師の過失が認められた判決を2件ご紹介いたします。

No.408の事案では、病院側は患者(産婦)が癒着胎盤(胎盤の絨毛が子宮筋層内に侵入し、胎盤の一部または全部が子宮壁に強く癒着して、胎盤の剥離が困難なもの)ではなく、付着胎盤(胎盤が子宮壁に付着しているが、筋層との結合が密ではなく、床脱落膜の欠損を伴わない真の癒着でないもの)であったと主張しました。

この点につき、裁判所は(ア)転院先の医師が、血腫と胎盤の位置関係についてあいまいな点が存するものの、患者の入院当初から一貫して胎盤遺残である旨の所見を有しており、その所見は超音波検査等に基づくものであり根拠のある合理的なものといえること、(イ)用手剥離した医師自身が患者の夫に胎盤癒着と説明したり、カルテに「胎盤癒着」と記載したりしていたこと、(ウ)患者が3590gもの大量の出血を来していることも、癒着胎盤の場合に用手剥離によって不完全な胎盤剥離がされると、止血のための子宮収縮が十分に起こりにくく、剥離部分からの止血不能の大出血を来すとされていることと整合すること等から、患者は癒着胎盤であったと認定しました。

No.409の紹介にあたっては、一審判決(平成30年2月20日、判例タイムズ1467号81頁)も参考にしました。

No.409の事案では、一審も控訴審も、低出生体重児であり、IUGR児であった患者(新生児)に対し、予防的に早期にブドウ糖溶液の点滴等を行わないのであれば、定期的に血糖値を測定する注意義務があったのに、医師がこれに違反したと認定しました。

しかし一審判決は、患者(新生児)は、胃出血ではなく、高カリウム血症による致死性不整脈を原因として後遺障害が生じた可能性もある等として医師の注意義務違反と後遺障害との間の因果関係を否定しました。

これに対し、控訴審判決は、高カリウム血症の原因の一つとして消化管出血が挙げられていること、患者のカリウム値は時間の経過とともに低下しており、一時的なものと考えられることからすれば、患者の高カリウム値は出血性ショックを原因とするものとみられる等として、患者の心肺停止が高カリウム血症を原因とするものとはいえないと判断しました。

また、患者の入院時における血糖値を推知する根拠となるデータは必ずしも十分なものがあるとはいえないが、それは血糖値を測定しなかったという医師の注意義務の懈怠により生じたものであって、血糖値の推移の不明確を当の医師にではなく、患者の不利益に帰する事は条理にも反するというべきであると判示しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2020年6月10日
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