今回は気管切開カニューレに関連して病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。
No.402の事案では、裁判所は、患者が心静止に陥った原因については、カニューレにティッシュを詰められたことによる窒息以外の機序があり得ないとまではいえないとしながら、カニューレに詰められていたティッシュが事故後廃棄されたこと、患者に装着されていたテレメータのセントラルモニターの記録が消去されたこと、監視カメラの映像が3週間で上書きされて消去されたことを指摘し、本件においては、本件事故の原因を究明する上で重要な証拠となり得たはずのものが、病院の看護師によって、結果的にはなくなっている事情をも勘案すれば、患者の心静止の原因がティッシュによる窒息であると認定することが相当であると判示しました。
No.403の事案では、病院側は、事故当時、応援を呼ぶなど他の行動を選択するよりも吸引を優先すべきであったかのようにも主張しました。しかし、裁判所は、たしかにガイドラインにおいても気管吸引に絶対的な禁忌はないとされており、呼吸困難の原因が痰であるときに、痰を吸引することにより呼吸困難が解消することはあり得ると判示しつつも、しかしながら、気管吸引の実施は、1回の吸引操作で10秒以上吸引せず、1回の挿入開始から終了までの時間は20秒以内にすべきとされているところ、(事故当時の看護師らの行動を評して)安全かつ効果的に吸引が実施できる見通しが不明であった状況下で、4分、5分もの間、アセスメントをせずに吸引を続行することが合理的であるとはいい難いと判示し、吸引を優先すべきだったとの病院側の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。