医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.400、401】

今回は、手術に際して患者の神経が損傷された事案を2件ご紹介します。

No.400の紹介にあたっては、一審判決(静岡地裁平成28年3月24日・ウエストロー・ジャパン)も参考にしました。

No.401の紹介にあたっても、一審判決(札幌地裁平成30年2月7日・ウエストロー・ジャパン)も参考にしました。

No.400の事案では、病院側は、患者に心因的要因があったとして素因減額を主張しましたが、裁判所は、患者に本件穿刺行為以前に心理的脆弱性が窺われるような既往症等があったとは認められないこと、CRPS患者の多くは、外傷後普通でない経過に困惑し不安を感じ、場合によっては怒りを内在している場合もあり、CRPS患者の訴えに耳を傾け治療を通じてCRPSという疾患の説明と教育をすることは非常に重要であるとして、精神心理学的な治療の重要性が説かれるとともに、CRPS患者に対する網羅的な心理評価を行った研究では「CRPS性格」と呼べるようなものがないことが報告されていることなどから、患者の心理的脆弱性が一般の個体差の範囲を超えるものであったとは断定できないなどと判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

No.401の事案では、患者の利き手である右手の痛みが続いていること等から、従来行っていた整体師の仕事をしておらず、服の着脱が難しい等日常生活に支障を来している状態であるとの供述が信用できるとされ、後遺障害等級9級10号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当し、労働能力を35%喪失したものと認定され、損害賠償額が一審よりも高額となりました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2020年2月10日
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