医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.40、41】

今回は、医療機関の設備や医療機器に起因する医療機関の責任が認定された判決を紹介いたします。

No.40の判決では、防火扉の設置の瑕疵自体については病院側も争ってはいません。転倒事故及び骨折には、患者側の疾患が寄与していることを斟酌(過失相殺の類推適用)して、損害賠償を減額すべきかどうかが主要な争点となったものです。

通常なら起こり得ない事故が、各種の疾患を有する患者が多数行き来している病院内では起きてしまうこともままあります。この判決は病院側に「利用者の安全へのより高度の注意義務」が課せられていると判断しており、注目されます。

No.41の判決紹介にあたっては、一審判決(平成13年3月30日千葉地方裁判所)が紹介された判例時報1755号108頁も参考にしました。一審では製造会社の責任だけが認められて、病院の責任は否定されましたが、控訴審では、機器を操作した臨床工学技士に安全性保持義務違反があったとして、製造会社だけでなく、病院の責任も認めました。

控訴審判決は、人工心肺装置の操作を行う臨床工学技士に課せられる安全性保持義務の内容として、具体的には「事前に機器自体の特性を習熟し、手術時に安全操作を行うことができるよう準備すべきこと」、「機器監視義務」、「事故発生の場合に備えて、機器の部品、交換用チューブの備え付け、その他の被害発生回避又は患者の重篤化の防止を図るための措置を予めとっておくべき義務」を挙げており、実務において参考となるものと思われます。

カテゴリ: 2005年2月22日
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