今回は、眼の手術に関して病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。
No.380の事案では、患者は、手術上の過誤も主張しましたが、裁判所は、手術担当医師らに過誤があったものとはみないが、その後2回も手術を重ね59日間も入院しなければならなかったことは患者の予期しないところであり、それは診察担当医師の診断上の過失と患者になすべき説明を怠ったことによるものであると判示しました。
No.381の事案では、患者は医師が緑膿菌の感染に対する不十分な予防措置しか採らなかった点も主張しましたが、裁判所は、医師が手術施行後緑膿菌の感染時期と思われる日までの間、感染予防のためのテトラサイクリン眼軟膏及びエコリシン点眼剤の投与を継続的に行っており、かつこれらの各薬剤は当時において緑膿菌の感染予防のために一応有効であったことが認められるとして、手術後の感染予防措置は、結果的に患者の緑膿菌感染を防止しえなかったとはいえ、平均的な眼科医としての注意義務に欠けるところはなかったと判断して、この点についての医師の過失は否定しました。
両事案とも昭和期の判例ですので、現在の医療水準とはかなり異なっていると思いますが、手術の前後における医師の注意義務に関する裁判所の判断枠組み自体には大きな変化はないと思われますし、医療現場における状況の現在との比較という観点からも実務の参考になろうかと存じます。