今回は、小児科医療における医師の過失を認めた裁判例を2件ご紹介します。
No.378の事案では、病院側が、未熟児室では細菌感染防止に十分の配慮がなされているので、未熟児室における生後感染は考えられないと主張しました。しかし、裁判所は、未熟児室内で、3名の担当医師がクベースの両面に2個ずつ開けられた穴(片面の二個の穴はおむつ交換専用)から両手を差し入れて聴診器で全身を診察し、専属看護師5名が8時間交替でクベース内の患者に対し、哺乳、おむつ交換等を行っていたこと、クベースには空気穴があり、未熟児室内の空気は内部に入るがいわゆる外気が入る余地はないこと、鑑定によれば本来無菌であるべき未熟児室においても実際上は細菌の存在を全く否定できないことなどを指摘し、患者は医師の回診または看護師による看護行為の際の接触により何らかの細菌に感染したものと推認しました。
No.379の事案では、病院側は、患者は食道再建手術後、呼吸障害に対する呼吸管理上の必要から最終的に気管切開を受けたのであり、気管切開前から健常な呼吸状態ではなく、気管切開後本件事故までの間にも気管の肉芽や分泌物等によって呼吸が悪化したことが度々あったことから、本件事故と遷延性の窒息による患者の死亡との間に因果関係はないとも主張しました。しかし、裁判所は、患者の肺合併症は気管カニューレを挿入するようになってから次第に改善され、本件事故発生当時は今後肉芽の形成による気道狭窄に対する治療が相当期間必要とされてはいたものの、身体的には全体として良好な状態に向かっていて、将来の退院、自宅療養を見込めるほどになっていたのであって、本件事故が発生しなくても患者が遷延性の窒息により死亡する余地があったとは考えられないとして、病院側の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。