今回は投与薬剤の副作用に関して病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。
No.376の事案では、患者側は、患者の疾患(尖圭コンジローマ)に対する電気焼灼によりその部位の皮膚は一種の火傷状態になっていたのであるから、副作用の強い軟膏を使用すべきでなかったとも主張しましたが、裁判所は、患者の疾患を根治するためには、電気焼灼、凍結療法の外科的療法のみで十分であったとは言い難く、医師が外科的療法のほかに薬物療法を併用したことが不相当であったということはできず、投与した軟膏には、患者の疾患に対する適応もあるのであるから、副作用として塗布部にびらんや潰瘍を惹起する危険があるとしても、そのことから直ちに医師が本件軟膏を使用する治療方針を採用したこと自体に過失があるとまではいえないと判示しました。
No.377の事案では、病院側は、患者の死亡に関して医薬品副作用被害救済・研究振興基金(以下、「医薬品基金」といいます。)から医薬品基金法に基づき給付がなされていることから、投薬に当たって過誤がなかったと医療専門家が判断したことを意味するので、病院には抗菌薬の投与について過誤はなかったと主張しました。これに対し、裁判所は、医薬品基本法によれば、投薬に関する過誤があった場合には、医薬品基本法に基づく給付はなされない建前となっており、本件患者についても、給付決定の過程において、抗菌薬の投与について過誤がなかったことが一応是認されたことが推認されるものではあるが、上記過程における検討の具体的内容、特に、本件において原告(患者遺族)らが主張するような過失の有無についていかなる検討が加えられたかは明らかではなく、本件患者について同法に基づく給付決定がなされたとの一事をもってしては、過失を認めた裁判所の判断を覆すに足りないとして、病院側の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。