医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.372、373】

今回は、帝王切開後の病院の対応に過失が認められた判決を2件ご紹介いたします。

No.372の事案紹介にあたっては、掲載雑誌の発行会社のホームページ上で掲載されている判決全文も参考にしました。

同事案では、将来、患者が大学病院(控訴人が経営しています)を退院した後の介護費用について、一括支払いではなく、1日あたり2万円の割合という定期金による賠償を命じています。この点について、裁判所は、患者がすでに症状が固定して12年を超えており、大学病院において何らかの治療を受けなければならないという状況ではなく、今後、病院を退院することも予想されること、退院した場合には相応の介護費用が必要となり、本訴において控訴人が介護に要する費用の額を争っていることに照らすと、将来始まる定期金による賠償についてあらかじめ請求を行う必要性はあると認定し、介護施設に入所させる場合の費用や、在宅介護サービスを受ける場合の負担などを考慮して賠償額を算定しています。そして、この定期金の額が、将来、介護費用の著しい変動その他の著しい事象の変更により、現実に介護を受けるのに必要な費用に比して著しく不相当となった場合には、民事訴訟法117条の規定により、その額の変更を求めることができ、被控訴人(患者)ら、控訴人ともに、この制度を利用して将来にわたり適正かつ相当な賠償を実現することができるものであると判示しています。

No.373の事案では、患者遺族側は、帝王切開から平成18年1月17日午前8時ころまでの間、降圧剤は投与されていないと主張し、病院側は、1月13日に5日分のアプレゾリン(降圧剤)が処方されていたことを根拠として、帝王切開後の1月16日午後6時ころ、患者にアプレゾリンを内服させたと主張しました。裁判所は、1月13日の処方は、帝王切開を前提としてなかった時点でなされたものであり、帝王切開により高血圧状態が落ち着く可能性もあったことからすると、帝王切開後において改めて血圧の推移を見定めた上でアプレゾリンを投与する必要性を検討するのが自然であるから、帝王切開後においても同処方が維持されていたとは断定しがたく、同処方を受けてアプレゾリンを内服したと直ちには認められないと判示しました。また、1月16日午後6時ころにアプレゾリンを内服した旨の記載は認められない(当該病院においては処方された内服薬を患者が服用した場合、その旨がカルテ上に記載される)こと、被告は弁論準備手続きの段階において、帝王切開から1月17日午前8時ころまでの間、降圧剤を投与しなかったと一貫して主張し、その正当性も主張していたところ、人証調べの段階に至って、突如として従前の主張と異なる供述をしたことなどから、1月16日午後6時ころにアプレゾリンを内服させたとの医師や看護師の供述を採用せず、病院側の上記主張を排斥しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2018年12月 7日
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