医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.370、371】

今回は、脳動脈瘤のネッククリッピング手術における医師の操作ミスが認められた判決を2件ご紹介します。

No.370の事案では、病院側は、患者の脳梗塞の原因として脳血管攣縮、脳血栓または脳塞栓によるM1基始部の閉塞が考えられると主張しました。しかし、裁判所は、鑑定人が患者の脳梗塞につき、M2下行枝がクリップで挟まれて閉塞したことと、M2上行枝がキンク(ねじれ)によって閉塞したこととが相俟って、中大脳動脈の血流が行き場を失い、閉塞が中大脳動脈水平部(M1)に及んだことによって発生したものであると説明し、更に、本脳梗塞は術直後に発生し、しかも中大脳動脈領域に限られていることから手術による脳動脈の閉塞が最も考えられる等と述べていることなどから、病院側の主張を採用しませんでした。

No.371の事案では、病院側は手術中に損傷した内頸動脈の血行再建をまず行うとその際に使用される被覆型クリップが術野の妨げとなり、破裂動脈瘤と診断されていた脳底動脈左上小脳動脈瘤のネッククリッピング手術ができなくなってしまう旨主張しましたが、裁判所は、本件では内頸動脈損傷後まず内頸動脈血行再建を最優先で行うべきであったから、その結果として脳底動脈左上小脳動脈瘤のネッククリッピング手術の続行が不可能となったとしてもやむを得ないことであり、同手術は後日別の開頭方法により行うほかはなかったというべきであると判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2018年11月 8日
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