医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.366、367】

今回は、周産期医療における医師の過失が認定された事案を2件ご紹介します。

No.366の事案では、分娩監視記録が胎児仮死状態と整合するか否かにつき、争いがありました。裁判所は、12時11分ころから14時17分ころまでの記録については、3人の鑑定の結果で、1人目が「遅発一過性徐脈が継続して認められる」とし、2人目が「変動性か遅発性の一過性徐脈が認められる」とし、3人目が「正確な判断ができないものの遅発一過性徐脈と考えられる部分が数カ所ある」としていることから、分娩監視記録の記載は胎児仮死と矛盾しない所見であると判断しました。

また、14時59分ころから15時59分ころまでの分娩監視記録には、胎児仮死を疑わせる所見はないが、当該分娩監視記録に記載されていた胎児心拍数の推移がそれ以外の時刻の分娩監視記録の記載よりも低下していること、子宮口全開大から通常であれば存在していたであろう怒責による収縮曲線が全く記録されていないこと、証拠保全の際、病院は分娩監視記録を提示できず、その後郵送により提出したこと、当該分娩監視記録はその両端が切り取られていること、出生後の新生児仮死状態に照らすと、14時59分ころから15時59分ころまでの間は胎児仮死状態にあった可能性が高いと考えられることから、当該分娩監視記録が本件胎児の母親の分娩監視記録であると認めることはできないと判示しました。

No. 367の事案では、病院側は、平成20年4月当時、産科の臨床医学において、SI(ショックインデックス)を用いてショック状態を把握することは一般的ではなかったと主張しました。しかし、裁判所は、SIが1.5を超え、産科DICスコアが8点を超えたら直ちに輸血を開始するという産科出血ガイドラインは、本件手術時には公開されていなかったとしても、本件手術以前に公表された一般的な医学文献において、産科出血及び産科ショックの症候として、一般に血液消失量の肉眼的評価は過少になるのでSIにより評価することが推奨されており、産科ショックの対応として循環血液量の20%を超える出血があった場合には輸血の適応があることが指摘されていたとして、病院側の上記主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2018年9月 6日
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