今回は、手術後の経過観察義務違反や検査義務違反が認められた事案を2件ご紹介します。
No.352の事案では、患者(専業主婦)は肛門括約筋の受傷時から完治までの間、ガス漏れや大便漏れ(月2回ないし3回程度)のため買物や散歩のための外出を控えざるを得なかったとして、裁判所は、患者が肛門括約筋断裂により労働能力を20%喪失しているとして損害額を算定しました。
No.353の事案では、裁判所に複数の鑑定が提出されており、その中には、救急搬送による入院時の血液検査を行わなかったことにつき、妥当あるいは許容範囲とする記載を含むものもありました。しかし、裁判所は、鎮痛剤等を処方して痛みのコントロールをすることと、腰痛麻酔後神経障害以外の可能性も疑い、血液検査を実施することとは両立するものであって、患者について重篤な疾患が発生している可能性を検討すべきであったことに照らし、鑑定のうち、血液検査を行わなかったことを妥当あるいは許容範囲とする記載部分を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。