今回は、薬剤不投与に関する病院の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。
No.350の事案では、病院側は、当時は経口摂取中のビタミン補給に対する保険診療の査定が厳しかった旨主張しましたが、裁判所は、患者が厚生省(当時)の保険診療に関する運用通達が定める要件を充足しており、当該患者については高カロリー輸液に総合ビタミン剤を混入投与しても、その薬剤料の全額が問題なく健康保険に算定することができたと判示し、病院側は、保健診療の査定が厳しかったことを理由に責任を免れることはできないと判示しました。
No.351の事案紹介にあたっては、一審判決も参考にしました。
No.351の事案では、病院側は、患者の再生不良性貧血の状態自体が悪化していたとして、薬剤(サンディミュン)不投与と患者の死亡との間には相当因果関係がないと主張しました。しかし、裁判所は、中等症の段階でサンディミュンによる免疫抑制療法の治療を開始した場合と重症の段階で同治療を開始した場合とを比較すると、一般的にその予後に有意な差があるという医学的知見があるとして、中等症の時点での患者に対するサンディミュン不投与と患者の死亡との間には相当因果関係があると判断しました。
両事案とも実務の参考になるかと存じます。