医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.348、349】

今回は、医師側の損害賠償義務を認める一方で、損害額の算定においては、患者側の過失や損害への寄与が考慮された裁判例を2件ご紹介します。

No.348の事案では、医師の誤診を認定されましたが、裁判所は、患者が異常に肥満していることを医師が良く知っており、かつて慢性胃炎の治療をしたこともあって常々食べ過ぎないよう助言していたので、過食の予断を持った疑いがあると判決で指摘されました。

No.349の事案では、病院側は、患者の肝硬変及び肝がん罹患と病院側の債務不履行との因果関係を争い、その理由として、患者が受診する際には、B型肝炎ウイルスに含まれるHBV DNAの一部分が患者の遺伝子に組み込まれていたのであるから、肝硬変及び肝がんへの進行を抑制することができないとし、これを裏付ける医師の意見書を提出しました。

しかし、裁判所は、病院側の主張は、HBV DNAが患者の遺伝子に組み込まれている可能性が高いことを根拠に、肝臓専門医療機関においてラミブジンの治療効果がないとするものであるところ、医師の意見書の見解はあくまで推論に過ぎないうえ、同意見書も言及するように、本件においては、HBV遺伝子の増殖活性状態を示す検査結果は認められず、現実に患者の遺伝子にB型肝炎ウイルスのHBV DNAが組み込まれた高度の蓋然性を認めるに足りる証拠はないとして、この点に関する病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2017年12月 8日
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