医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.32、33】

今回は、代替的治療法についての医師の説明義務が争点となった判決を2件ご紹介します。

No.32は、乳がんの手術(乳房切除)にあたり、当時医療水準として未確立であった乳房温存療法について医師の知る範囲で説明すべき義務があるとした最高裁判所判決(判例時報1769号56頁)です。その後この最高裁判決によって破棄差し戻しされた大阪高裁は平成14年9月26日に判決を言い渡しました。今回最高裁判決をご紹介するにあたり、一審判決(大阪地裁平成8年5月29日判決、判例タイムズ928号240頁)、控訴審判決(大阪高裁平成9年9月19日判決、判例タイムズ972号251頁)、破棄差し戻し後の上記大阪高裁判決(判例タイムズ1114号240頁)も参考にしました。

No.33は、子宮頸がんの治療にあたり、当時最善の治療法とされていた子宮全摘出術だけでなく、代替的治療法として、子宮を摘出しない治療的円錐切除術があることを説明すべきであったとした福岡高裁判決(訟務月報49巻6号1666頁)です。出典である訟務月報には、一審判決も掲載されていましたので、紹介にあたり参考にしました。

上記2つの判決は、説明義務の有無の判断にあたり、いずれも患者の「生活の質」について言及しています。乳房や子宮の温存が患者の「生活の質」を維持する効果があるという点が重視されたといえます。

「生活の質」=QOL=クオリティ・オブ・ライフの視点が医療過誤訴訟においても定着しつつあることに着目したいと思います。

カテゴリ: 2004年10月26日
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