今回は、ERCP検査後に患者が急性膵炎を発症して死亡したことにつき、病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介します。
No.318の事案では、患者遺族は、ERCP検査における手技上の過誤も主張しました。この点につき、裁判所は、患者について膵臓の疾患の疑いが全くなく、総胆管の造影を目的とした本件ERCP検査において、主治医が意図的に膵管を膵尾部まできちんと造影したことは、不必要であったばかりでなく、不適切なものであったと判断しましたが、他方で、膵管造影が不要であったことから直ちに患者の急性膵炎がこれによって生起されたものと解することは困難であるとして、手技上の過誤により急性膵炎を発症させたとする主張は否定しました。
No.319の事案では、患者は末期胆嚢癌(余命は6ヶ月)でしたが、死亡慰謝料として2000万円が相当とされました。
算定にあたり、裁判所は、急性膵炎発症初期の段階で、患者の妻子が医師の診察を求めたり、輸液の必要性を告げたりしたにもかかわらず、病院がこれに対応しなかったこと(患者の妻はERCP検査の翌日、患者にひどい疼痛があったため、主治医の診察を受けたいと看護師に依頼したが、このとき主治医が診察に来ることはなかった。また、ERCP検査の2日後に患者の妻子が、患者に下痢や血圧の低下が見られたことから脱水を疑い、看護師に対し、輸液の不足を指摘し、医師の診察を求めたときも、病院の連携不足等によって医師の診察を受けることができなかった)、この時点で適切に対応していれば、患者は急性膵炎によって死亡することはなかったと考えられることからすれば、病院側の過失は大きいといわざるを得ないと判示し、家族の助力も空しく死亡せざるを得なかった患者の無念さ、その他本件に現れた一切の事情も踏まえると、患者の余命が6ヶ月であったことを考慮しても、その死亡慰謝料は2000万円と認めるのが相当であると判示しました。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。