今回は、いわゆるグループホームでの転倒事故に関して、施設側の損害賠償責任が認められた事案を2件ご紹介します。
紹介にあたって、判決の原文で「痴呆」と記載されている箇所を「認知症」に変更しています。
No.316の事案では、入居者の後遺障害慰謝料の算定にあたり、入居者の認知症の症状が著明であり、骨折したことを忘れている状況にあって、術前及び術後において、立位や座位の姿勢を無理にとったり、不穏行動が多々見られた上に、リハビリに意欲的に取り組むことがなかったこと、このような事情が入居者の股関節可動域に大いに影響していると思われることなどを指摘し、入居者が後遺障害等級10級に至ったことについて、5割の素因減額を認めるのが、損害の公平の分担に照らして相当であると判断しました。
No.317の事案では、施設側がいくつかの事情を挙げて、慰謝料額の減額を主張しましたが、裁判所は、本件施設のような介護施設では、予定される利用者や施設の性格からして、骨折等の事故防止が特に重要とみられることから、結論として、慰謝料額を安易に減額することは慎重であるべきであり、実務的に確立された、交通事故などで用いられる入通院期間を基準とした慰謝料を認めるのが相当であると判断しました。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。